ここで、カリフォルニア州エネルギー委員会での仕事について少し触れておく。
まず、どうやって見つけたかであるが、これが全くの偶然で、たまたま同じ学部の韓国人のクラスメイトと話をしていた時に耳にしたのである。その当時(2021年の夏休み直前)、私は大学院を卒業するための最後の秋の学期をなんとか金銭的に乗り切るため、大学の中での仕事探しに奔走していた。
やっとのことで、ある教授のリサーチの助手として夏休みの期間雇ってもらえることとなり、ホッとしていたのだが、それが直前にダメになってしまったのである。これでは学費を払うことができず、完全に途方に暮れてしまったのであるが、不思議となんとかなる気もしていた。
そのような時、上記のクラスメイトと立ち話をして、カリフォルニア州のエネルギー委員会という組織で、大学院生のリサーチアシスタントを探していると聞いた。そして、この仕事は、大変楽なうえ、フルタイムで働くと月40万円近くもらえるということだった。これだけもらえれば、金銭問題は解決である。早速面接を受けにいって、なんとか仕事にありついた。この「拾う神あり」的な体験は、「なんとかなるだろう」という私の少し楽観的な人生観の形成に影響を与えたイベントの一つだろうと思う。
カリフォルニア州エネルギー委員会とは、よくわからない組織であった。カリフォルニア州における環境にやさしく持続的なエネルギーの安定な供給へ貢献するというようなことを目的としているようで、サクラメントの中心街に4-5階建ての立派なビルを構えていたが、驚くべきことに、あまり仕事がないようだった。職員は皆、大卒・大学院卒のホワイトカラーで、それぞれ2mx3mくらいのワーキングスペースと机・PCを与えられていたが、朝から晩までパソコンでゲームをしているような人がゴロゴロいた。私も最初の2-3日は新聞の切り抜きを集めるといった調査の仕事を与えられたが、それが何に使われるかよくわからなかったし、それ以降、卒業までの数か月にわたり、とくに仕事を与えられることもなかった。最初は「干された」のかと思ったが、近くの席の「同僚」の大学院生に聞いたところ、彼も暇そうだった。
どのような目的で設立され、どのような経緯を辿ってきたかわからないが、いい大人が朝から晩までブラブラしている公共の組織は、今から思うとちょっと不思議を通り越して不気味な空間だったと思う。が、とりあえずお金が必要だった私は、大学の宿題をしながら、座っているだけでそこそこの給料がもらえる夢のような機会が降ってきたと、自分の幸運に感謝せずにいられなかった。
月末に何時間働いたか、タイムレポートを提出するのであるが、私はいつもフルタイムで提出していた。タイムレポートを受け取るおじさんは、さすがに「いい加減にしろ、働いてないだろ!」という目つきをされたが、インドでの貧乏旅行からそう年月も経っていない頃でもあり、自分が図々しく映ることに全く躊躇がなかった。
(つづく)