シエラネバダ山脈の中腹にあるセコイア国立公園から、第一日目の宿泊地であるベイカーズフィールドまでは、まず山道を車で延々と下る。平日にもかかわらず観光客が多く、道はやや渋滞気味。下り坂なのでブレーキを放せば車は自然に動く。前の車に追いつきそうになるとブレーキ踏む。これを繰り返していた。

 

すると、どこからともなく焦げ臭いニオイがしてきた。最初は気にも留めなかったが、しばらくしてもニオイが消えないので、その発生源はどこかとキョロキョロしだした。ニオイがし続けているということは、前後の車なのかなと思ったが、前の車も後ろの車も変わった様子がない。そのうち、さらに匂いが濃くなってきたので、これは自分の車なのではと思い始め、路肩に止めて、前や後ろを確認した。すると、やはり自分の車からにおっているようで、さらに調べてみると、前のタイヤのあたりがニオイの発生源であることが分かった。どうやら、引っ越しの荷物で重量がかさんでいるところへ、ブレーキを踏んだり離したりを繰り返しているうちに、ブレーキパッドが焼けてしまったらしい。

 

これには焦った。下り坂はしばらく続きそうだし、いまさら積み荷を降ろして重量を軽くするわけにもいかない。仕方ないので、しばらく路肩に駐車し続けてブレーキパッドを冷ますことにした。一体どれだけ冷ませばよいのか見当もつかなかったが、少し溶け気味になったゴムが冷める状態を頭で想像しながら、10分くらいして、もう大丈夫だろうと勝手に決めて出発。ここからは、なるべく丁寧にブレーキをかけるよう心掛けた。なんとなく焦げ臭いニオイが引き続きし続けたので、かなりヒヤヒヤしたが、無事に坂を折きって、夕方にはベイカーズフィールドの街に到着した。今後の長い旅に不安の影を落とす事件だった。

 

 

(つづく)