第一日目の午後4時、太陽がかなり傾いてきた頃、予定通り標高3500メートルのキャンプ地に辿り着いた。このキャンプ地はかなり平地があり、中々の高地でもありながら林があり、明るく過ごしやすそうな場所であった。昨夜はパコラ村に到着した時にはかなりゲンナリしてしまったが、トレッキング一日目の夜は多少なりとも気持ち良く過ごせそうでホッとした。平らな場所を探して、テントを立てて、寝袋を広げ、野菜を切ってから火を起こして食事を作り、そして早めに寝た。

 

翌日は普通に目が覚めた。標高が富士山の頂上と同じくらいだったこともあり、少し高山病を心配したが、二人とも全くその影響がなかった。第二日目は、引き続き谷沿いの道を登り、標高4100メートルくらいの地点に向かう。このあたりまで来るとさすがに植生は変わり、背の高い木はない。ただ、植生といっても基本的には乾いた土地であり、所々に草が生えていたり茂みがあったりという程度である。なので、かなり見通しも良く、道に迷うことはない。第三日目に超える峠もしっかり見えてくる。そしていよいよ息は苦しくなってきた。

 

この日は4-5時間程度の行程。キャンプ地は標高4500メートルのアスンバル峠が1キロ以内に近づいている場所。キャンプ地に到着する少し前には、粗末に石を重ねただけで造られた家が一軒だけある場所を通り過ぎた。集落ではなく、一家族がポツンとあるだけある。通りかかると、ここに住んでいるオバサンが出てきて、お茶を飲んでいけと言う。せっかくなのでいただいたが、オバサンは自分から声をかけておきながら、とても面倒くさそうで、「飲んだらさっさとあっちへ行け」と言わんばかりの態度である。日焼けして皺だらけの表情からその真意をうかがうことは難しかったが、あまり歓迎している風ではない。遠くから来た人をとりあえずもてなすという風習があって、自分の意志とは無関係に、とりあえずそれをやっている、というように見えなくもなかったが、よくわからなかった。その後、近くで娘たちが3人出現した。彼女たちは友好的で笑顔だった。また、好奇心が旺盛なのか、我々を様子を興味深そうに見ていた。

 

↑我々をじっと興味深そうに見ていた娘たち

 

↑ひとしきり我々を見たあとは、飽きたのか山の向こうに消えて行った。

この広大な場所が彼女たちの遊び場である

 

この日のキャンプ地はなかなか眺めの良い場所で、ガイドブックに記載されていたとおり、平らな地形に背の低い芝生のような草が生えている。ここにチョロチョロと小川が流れていて、そのままでも飲めるということだった。まさにキャンプ適地といった場所。昨日より景色も良いし、なにしろたった4-5時間の行程であったことから、太陽がかなり高いうちに終了できた。ゆっくり食事の準備もできたし、小川で靴下を洗ったりして過ごした。ここで前半戦の2日間が終了。明日はいよいよ標高4500メートルの峠越えである。

 

(つづく)

 

↑テント場。バックは出発地方面の景色

 

↑灯油の調理用ストーブはガスコンロのようにワンタッチで火が点くわけではなく少々面倒