さて、パキスタン北部を含む世界中の辺境をカバーしている米軍の地図であるが、自分の通う大学の図書館にはなかった。が、隣り町の大学の図書館にあることが判明した。隣町といってもアメリカは広い。バスを乗り継いで1時間半ほどかかった。図書館の最上階の端っこのエリアに大判の地図が収められている棚があり、引き出しを引いてみると、80cm x 40cmくらいの大きな地図が重ねてあった。US Army(米国陸軍)製。何枚かめくってみると目当ての地図があった。ただ、ガイドブックよりは良いが、昭文社の地図には遠く及ばないかなりざっくりである。そして、なんと1964年製作と記載されていた。もっともその時からあまり地形も道も変わっていないかもしれないが。もちろん白黒。これが軍人の地図なのか。まあ無いよりはマシということでコピーをして帰った。(ちなみに、後日実際に現地に行ってみたところ、道が記載されているものと大きく違っているし、地形も見づらく、ほとんど役に立たないことがわかった。。。)

 

体力づくりをはじめ、ガイドブックと地図を入手した次は、グッズの入手である。まずテント。これは山の風雨に耐える強度のあるものが必要で、自宅にあるキャンプ用では全く歯が立たない。入手後に早速組み立ててみると、なかなか良い。寝床が信頼できそうで安心した。そして調理用のストーブ。ガイドブックによれば、パキスタンの僻地でも現地調達が可能な灯油が使えるものが必要となる。そしてザック。70リットルくらいの大型のものを購入した。そのほか、登山靴や寝袋、雨具、調理道具等々は既に持っていたもので大丈夫そうであった。あとは細かいものでいうと、川などで汲んだ水に垂らして飲料水とするためのヨードチンキなどは大事なグッズである。山道は谷に沿って登り、峠を越えた向こうの谷に沿って降りるコースなので、ほぼ常に川が近くにある。だが、ガイドブックによれば、ヤギやヒツジがウロウロしているとのことで、浄化することなくそのまま飲むことはできない。所々に湧き水はあるが、それほど頻繁ではなさそうなので、ヨードチンキのようなものが必要となるのである。(ただ、ヨードチンキ入りの水は至極不味い。実際には1度くらいしか使う機会がなかったので本当に良かった。)

 

なお、このトレッキングは2か月のインド・パキスタンの貧乏旅行のうちの1イベントである。なので、登山以外の持ち物もあった。例えば、この頃の旅では音楽は欠かせなかったので、カセットテープを10本くらい持って行ったし、パキスタンに入国後、中国製の2000円くらいのラジカセも入手した。結果として私のザックの総重量は22キロであった。地面に置いてあるザックを背負うときには、まず膝を曲げてから背中に載せ、ヨッコラショと立ち上がりながら担ぎあげる感じの重さである。連れの奥さんの荷物も13-14キロはあったと思う。

 

次回からはパキスタン北部に入ってからの話をする。

大学での勉強の間、楽しいことを想像しながら準備に励んだが、人のほとんどいない辺境でのトレッキングなど、冷静に考えると、私にとっては捨て身といえるイベントであった。

 

↑パキスタン北部の村の宿で。トレッキング開始する数日前

 

(つづく)