きせき | 蒼空日記

蒼空日記

しあわせダイアリー




うちは五人家族で、食卓はいつも賑やかでした。

お父さんは夏はランニングで晩酌して、ちょこちょこ肴をつまみながら野球を見ます。

私たちは野球が嫌で、チャンネルを変えては戻されてました。

網戸越しに虫の声が聞こえます。

仕方ない。野球を見ながら、学校でどんな事があったか、我れ先にと話をするのです。

赤い顔したお父さんと、せわしなく動くお母さん。
ひっきりなしに続く、どーでもいいような話にいちいち反応して
ひとつのテーブルで、
笑い合いました。


無邪気な頃を過ぎれば、
揃っての食事はなかなか難しくなり、
たまに時間が合って一緒に食べれば、会話が続かなくて気まずい空気が流れました。
食事は流し込み、席を立とうとします。

そんな日、お父さんは野球やnhK
を見ません。

会話もなく、すぐに自分の部屋に戻ろうとする子供にリモコンを差し出して、

好きな番組見な!
って言いました。

いつも、そうでした。


最近、そんな事を思い返します。


今も、同じテーブルで、同じ位置に座って、
お父さんとお母さんは変わらず食事をします。





当然の顔してやってくる朝を、
気にも留めずに交わす言葉たちを、
柔らかく包み込む風を、
繰り返しの日常を、

それはあまりに眩しくて、埋もれて見えないから
真ん中に立てば特別だとは思えなくて。


次次にふりかかる残酷さに打ち拉がれて、
少しだけ顔をのぞかせてみても、
手をのばしても、

ポッケの穴に、
やっと、
やっと、やっと気付いたとしても、

もう、
どうしたって、つかめやしないんです。

ずっと手の中にあると疑わないものほど、
儚い。


今このあたりまえを
どーしようもなく愛しく思えたなら、
素敵だなって思います。