登山が大好きな父。
先日登った山では、おばあちゃんと子供が、
お茶やおひたし、羊羹までをも配っていたそうです。
「あんなに美味いお茶を飲んだのは初めてだよ。」
父親は本当に嬉しそうに話していました。
山ですれ違う人には「こんにちは」と、必ず挨拶をします。
子供の頃は不思議でなりませんでした。
ただ、面識の無いたった今すれ違うだけの人に、
自然と挨拶ができた時のなんとも言えない気持ちよさは、
幼心によく覚えています。
達成感、素晴らしい景色はもちろんのこと、
そういった人との触れ合いが自然と成立してしまうところが、
父親を虜にする山の魅力のひとつなのではないかと勝手に想像しました。
父親は続けました。
「足が痛くて下山ができない、もう山は厳しいかな。」
父親と、富士山に登った小1のあの日を、鮮明に思い出しました。
きのこ狩りで、一緒に夢中になってきのこをかごいっぱいにして、
頂上で食べたおにぎりが美味しくてぶっ飛んだこと、思い出しました。
いろんな父親、思い出しました。
山はもう厳しいかもしれないと感じた時に飲んだお茶だから忘れられなくて、
優しくて、甘くて、苦くて、きっとそれは父親の涙の味そのものだった気がします。
でもお父さん、はなえ、また一緒に山に登りたい。
最後だなんて言わないで。
さっき口には出せなかったけど、
私も、そのお茶を飲んでみたいの。
何気なく入れた一杯のお茶が、
お父さんをどれだけ幸せな気分にさせてくれたか、
そのおばあちゃんに、お礼が言いたいの。
歩けないならおんぶでも何でもするから、
また一緒に、同じ景色をみておにぎり食べよ!