20代崖っぷちになっても結婚出来ずに居た私は

医局秘書になった。


しかし、当時28歳。

独身の28歳が医局秘書として入ってきたら

医者目当てだと割とバレていた。

結局、合コンと変わらない立ち位置。

医者目当ての中身のない人間である事がバレているようで、たまに居心地が悪いこともあった。

医局秘書になるなら、20代前半でないと価値は少ない。

しかし、20代前半から薄給の医局秘書にしがみつきたいとはなかなか思わないだろうから難しい。




前回の記事で「医者の大半は性格が悪い」と記したが

私のような、いかにも結婚目的の様な無能な女に

性格良く接してくれる医者の方が少ないのは当たり前の話だ。

兎にも角にも医者は尊い職業。

選ばれた者しか許されない事をしている。

結局、執着していたものが手に入る程の女にはなれなかったのだ。



しかし、現場では研修医や日替わりアルバイトのお医者さんを含めて

独身の医者に会う機会は多かったし

おじいさん先生がとても可愛がってくれて

楽しい事も多かった。


薄給だったが、責任も少なく

なんのスキルもないのに事務職として採用して頂けてありがたかった。


28歳になってからは、合コンに誘われる機会もめっきり減った。

お金持ちのおじさんの銀座などの寿司屋の会食要員で声をかけられる機会が多くなった。

腐っても20代。

お年を召した方には需要があるものの

ほとんど既婚者の会。

ここで道を踏み外すと愛人コースまっしぐらだ。


朝6時起きで余力も少なかった為

そう言ったお誘いは、極力お断りした。




ある日、ある先生が

「これ」と、私に名刺を渡してきた。


名刺の追加注文かと思い

「追加で注文ですか?」

と尋ねると


「良かったら連絡ください」

と言われた。

よく見ると手書きでメールアドレスが書いてあった。



キターーーーーーー!!!!!

脈拍が一気に上がった。


今回の転職の最大の目的。



私に名刺をくださったのは

外科医のM先生だった。

身長が180センチ程あり、すらっとしていて

寡黙だが眼鏡が似合うセクシーな先生だった。


独身の研修医達に気を取られ

ノーマークだったが、普通にカッコいい。

めちゃくちゃ上玉だった。





その夜早速メールしてみる。

すぐに返ってきて何ターンかメールした。


他愛ない会話から始まり、

4ターン目で食事に誘ってくれた。

《ガッツポーズ》


こんなにスムーズに行くとは。


次の日から仕事に行くのがとても楽しくなった。

M先生が医局に戻ってくると

ドキドキワクワクが止まらなかった。


食事の約束をした後もメールのやり取りは続き

夜にパタリと連絡来なくなったなと思って

次の日出勤したら緊急オペで夜出勤していたりした。


医局秘書だと、先生の全ての生活を把握できる利点があった。

お食事の日まであと少し。


お食事前日、M先生からお店の連絡が来た。

表参道にある高級店。


その夜は念入りにメイクをして

お洒落して表参道に向かった。


胸が爆発しそうな夜だった。



《②へ続く》