令和最初の大学入試がすでに本番を迎えている。

折しも、新型コロナウイルスの流行が中国で発覚し、経済的に結びつきの強い日本でも影響を受けている。「よりによってこの時期に」という思いが強いが、受験生諸君も健康に十分留意されたい。

 

国内企業も、中国に生産拠点・販売拠点を置いているところが多いが、それだけでなはい。国内工場のみの製造業の場合でも原材料・部品が新型コロナの影響を受けて入ってこなくなると、お手上げである。どんな精巧な工業製品であっても、部品が1つ足りないと作れない。

戦時中、陸軍が友好国ドイツのメッサーシュミットをお手本に水冷式の二式戦闘機「飛燕」を量産したところ、肝心のエンジンの部品となる材料が日本国内で欠乏してしまい、エンジンのない「首なし」の「飛燕」の半完成機体が工場の片隅に数百機並んだという逸話が残っているが、今後事態が好転しないと、労働集約産業だけでなくハイテク分野においても中国産の部品が手に入らず操業停止に追い込まれる会社が出る可能性が高い。影響を受けるのは何もインバウンド需要だけではないのである。

 

船好きの筆者としては、横浜のクルーズ客船「ダイヤモンドプリンセス」号の現状に胸が痛む。患者の確認が進むなか、今も実質的な「隔離」が続いているが、一刻も早い事態の鎮静をお祈りしたい。20年かけてようやくここまで成長した日本近海のクルーズ事業が、これで相当な打撃を受けることは避けられないが、関係者は無念の思いだろう。

香川大学の経済学部には観光コースがあるが、こうなると観光業と防疫というのは不可分であることが痛いほどよくわかる。

以前、香川大では医学部の学生を対象に病院経営の講義があることを何かの機会に聞いた記憶がある。医療機器の経費や人件費といった問題が厳然として存在する以上、算術の下手なお医者さんでは経営が成り立たないケースも生じるからで、筆者も肯定的に受け止めたが、今度は逆に、本来文系である観光コースの学生に防疫関係や災害時の危機管理対応等の基礎知識について、医学や工学系のスタッフからの講義があってしかるべきである。

大学の講義は現在進行形で変化して当たり前なのであるから、ぜひ取り入れてもらいたい。

 

 

さて、前期試験本番が直前のいま、ちょっと不可解なデータを見つけたのでご紹介したい。

 

 

 

「みんなの大学情報」という民間のポータルサイトである。筆者の定点観測の対象になっているHPだが、ここでひとつ不思議なことに気が付いた。ここは、各大学の在学者がクチコミ情報を登録しているが、特に自分の大学、学部についての評判をアンケート集計している。

かなり老舗のサイトであるため、回答件数も相当たまっており、それなりの信頼性はあると筆者は判断している。

で、こないだふと思いついて、大学単位ではなく、各大学の学部単位の評判をとってみた。

すると、偏差値同様、「たいして変わらない」と思っていた香川大学の各学部について、学部単価の評価では大きな差があることがわかった。極端な例は、香川大学の経済学部と法学部の例であろう。

下の画像を見ていただきたい。

 

 

香川大学経済学部の口コミ(評判)

 

 

 

 

 

 

 

 

香川大学法学部の口コミ(評判)
 

これによると、香川大学経済学部のクチコミ評価は61件、香川大学法学部は34件であるが、老舗の経済学部が総合5点満点で3.99、比較的新設の法学部は3.63とはっきり差が出ている。特に項目別では、「講義・授業」についての評判が、経済学部は3.74に対して法学部は3.34と気になる差が生じている。数値的には大した差はないという印象を受けるが、国立大学563学部の順位で見ると、経済学部の277位に対して法学部は540位と、香川大学法学部の「講義・授業」に対する評判は国立大学全体でほぼ底辺に位置することになる。

もともと、香川大学の経済学部と法学部は歴史的に同じ学校の流れをくんでおり、同じキャンパス内にある。戦前の旧制高松高等商業学校以来の校地であり、香川県庁の高層ビルから歩いて5分足らず。高松市内随一の高級住宅街である番町の隣りに位置しており、高松市の氏神様、岩清尾八幡宮のふもとにある。(戦後、地名が大学の敷地だけ「幸町」となる前は「宮脇町」を名乗っていた。)立地についてはともに学生の評価が高い。経済学部のほうがやや評価が高いのは、同じ敷地あるといってもこちらが「母屋」であるため、建物群が市街地に近い便利な場所にあるためであろう。しかし、「講義・授業」については学生数の少ない法学部の方がきめ細かい授業が行われているだろうから、満足度も高いだろうと外野から想像していた。しかし、在学生たちはそう感じていないようだ。

個人別のクチコミを見ると、さんざんな内容である。うがった見方をすれば、理論中心の法学部よりも、フィールドワーク等も含む経済学部のほうが、今の学生には受けがいいのだろうか。法学部というと、どうしても資格試験や公務員試験のため入学後もぎゅうぎゅう勉強しているイメージがあるが、最近の地方公務員試験はペーパー試験重視から、コミュニケーション力を見るようになってきたため、各大学とも経済学部出身者の合格者数が増加している。募集は学部不問であるから、それだけ法学部出身者のパイが小さくなってしまっているのだが、「学生生活」が経済学部3.76に対して法学部3.27と大きく低下しているのはそのあたりに原因があるのだろうか。

 

比較のため、他の大学も見てみよう。

とりおり筆者が比較に使う福山市立大学都市経営学部の場合はどうだろうか。

 

 

 

福山市立大学都市経営学部の口コミ(評判)

 

 

ここは、市立の短大を転換して作った最後発の公立大学である。そのため、カリキュラムも最新で、経営学部というだけあってスタンダードな経済学部に比べてフィールドワーク等も多いように感じた。

ところが、クチコミ評価32件にあらわれた「講義・授業」の評判は、2.83。全国公立大学の183学部のなかで堂々の最下位である。

項目別に見て比較的評価が高いのは3.23の「アクセス・立地」。福山が山陽新幹線の停車駅であること、自転車でそこから15分程度ということが評価の理由だと思うが、もともと軍用地(陸軍の福山連隊)・工場用地の近くで、それをあてにした風俗街を抜けて毎日通学することを考えれば、どうなんだろうか。

福山市立大で在学生たちが2.0台をつけているのは2つ。2.83の「講義・授業」と2.97の「施設・設備」である。新設大学のため建物比較的新しいが、学生の絶対数が少ないためかキャンパスが田舎の県立高校以下の狭さで、専門蔵書等、足りないものも多いというのが不満の原因だろうか。かつて福山には広島大学福山分校(1988年まで生物生産学部と教育学部の一部)があった。いまローズアリーナのある緑町公園と商業施設「ココローズ」の一帯だが、これと比べても敷地は5分の1もないのではないだろうか。国立大学と公立大学の違いと言ってしまえばそれまでだが、将来の拡張を考えているのならば、市はもう少し広い場所を確保しておくべきだったろう。いま、大阪府立大学との統合で揺れている大阪市立大学は、戦前の商科大学認可にあわせ、大阪市議会は単科大学にもかかわらず、5万坪余の広大な敷地を大阪市の南端に用意して移転させた。これが、戦後の総合大学化に寄与したのは間違いない。

 

同じ小規模大学でも、老舗の名門校の場合はどうだろうか。

滋賀大学経済学部は香川大学経済学部と同じく戦前の旧制高等商業学校が前身で、大手企業の経済人のOBも多い。ただし、そのため県庁所在地の大津ではなく、データサイエンス学部と一緒に旧制彦根高商以来、琵琶湖のほとり彦根城のすぐ脇にある。彦根市は平成の町村合併で大きくなったが、もとは人口10万未満の地方観光都市である。

ここは、旧高商としての伝統があるだけに、「就職・進学」の評判は高く3.94。「講義・授業」は3.75、「研究室ゼミ」も3.84と勉強の面でも好評価である。同じ旧高商の香川大学経済学部も「就職・進学」は3.91、「講義・授業」は3.74、「研究室ゼミ」は3.80とほぼ同程度の評価であるから、戦前からの伝統校というのは、そこそこの品質が担保されていると見ることができる。

逆に滋賀大が低いのは、唯一標準値の3を切っている2.85の「アクセス・立地」と、実質単科大学のため3.03の「施設・設備」とである。筆者も何度か行ったことがあるからわかるのだが、彦根のある湖東は盆地のためか夏は暑いが冬も寒い。そしてしっかり雪が積もる。東海道新幹線の冬季のダイヤの遅れは、たいてい関ヶ原からこのあたりの雪が原因である。

気候温暖な瀬戸内の県都高松にあるため「アクセス・立地」が4.0、総合大学のメインキャンパスに学部が位置して「施設・設備」が3.54という香川大学経済学部とは好対照である。

 

滋賀大学経済学部の口コミ(評判)

 

 

では、