前項では、内容的に大分大学経済学部を批判する論調となってしまった。
ここで、フォローさせていただくと、今の大分大学経済学部の現状は、(学力的にいささかものたりない面はあるものの)学生が「実力以上」に社会に評価され続けているという点では、大学としてちゃんと「やることをやっている」わけで、これは大いに評価できる。

在学生の学力的には同程度の入試偏差値であっても、新設校にはない、戦前からの「遺産」というものを十分活用しているためであろう。



大分大学
経済学部のある分大旦野原キャンパス


そのひとつのあらわれが、以下紹介する経済学部同窓会と経済学部が一体となった就職活動、「学生と先輩との交流会」である。
まだ今年で4回目の新しい取り組みで、ずいぶん前から同種の取り組みをを行っている滋賀大学経済学部等から見れば「いまさら」観もあるが、就職活動のスタート時期が変わって全国の学生が右往左往している現在、非常に今日的な話題である。
そもそも、「交流会」と銘打って「就職活動の解禁日」に先んじて行われているため、就活スタート時期の変更の影響を受けない。このため学生側にもスケジュールに余裕がある。しかも経済学部側が全面協力しているため、授業に支障が出ないよう夜間に行われている。これは、企業側も人を出しやすい。おそらく、採用担当者またはそれに近い立場のOBが「ボランティア」として参加しているのであろう。グループ分けして、7名前後の学生と3名程度のOBが30分以上会話するのであるから、下手な就職説明会顔負けの密度の濃さである。毎年、学生側の参加人数が10%ずつ増加しているのも、むべなるかなである。


一般に、大学の就職活動と言うと、ゼミの先輩後輩、クラブの先輩後輩等の人脈を駆使して行われる。しかし、そのような人脈を全然持たない学生でも、こうした席でOBと直接名刺を交換することで容易に会社とのつながりを開拓できる。堂々たる、コネである。参加人数は、学生2に対してOB1の割合であるから、2時間近くの間、交代制で適宜席のメンバーを何度か入れ替えることによって、お互いにじっくりと話すことができる。
少なくとも、参加した学部学生には、「同窓会」の存在とその有難さを強く印象付けており、会社側とのファーストコンタクトの場として有用であろう。
もともと大分大学経済学部のお膝元大分支部の四極会の年次総会は、参加人数が60名前後にとどまる東京支部とは違って、毎年150名以上の会員が参加して盛況である。平成24年にiichiko音の泉ホールで開かれた「大分大学経済学部創立90周年記念式典」には、約500名の関係者が集まった。普段、OB同士の職域交流会等も行なわれており、その延長として学生とOBとの交流会に発展したとみられる。少しでも「現役学生の役に立てば」というOB側の配慮だ。



滋賀大学
滋賀大学経済学部キャンパス


ただ、ひとつ大きな問題は、この催しの参加企業が「大分県ローカル」に限定された大分県内の行事であることである。そこが、35年前から県外の大手企業に就職したOBが彦根にやってきて開催している滋賀大学経済学部の「陵水懇話会」とは決定的に違う点である。滋賀大では毎年盛況で、例年160名ほどが出席する。このため、近年では県外若手OB有志による「ジュニア陵水懇話会」も開催されるようになった。大津市の教育学部との統合移転を拒否し、滋賀医大との合併も拒否し、ひたすら「彦根経済大学」の実質を彦根高商創立以来90年以上堅持してきた滋賀大学経済学部ならではである。また、香川大学経済学部では、もう20年以上も前から同窓会である又信会の東京支部総会に就職活動中の経済学部・法学部の現役学生も参加させている。


幸町
香川大学経済学部


大分大学経済学部の場合は、こうした「県外志向」が残念ながら見られない。それが前述の「経済学部の地域なんちゃら学部への数年後の改組」とリンクして、大分大学のテリトリーを今後大分県内だけに特化しようとする風潮が学内・同窓会にあるならば、大いに問題である。
すでに同窓会である四極会側も、この経済学部側の「地域との連携を軸に、新しい使命を持った特色のある学部を目指す」という方針を2年前に了承しており、経済学部の新学部への改組は秒読み段階にあるとみられる。しかし、これが同じ大分県内で台頭する立命館アジア太平洋大学に対抗した、地域ローカル大学として生き残るための、単なる「県内優良就職先の囲い込み運動」に終始するだけなら、大学として先の発展は見込めないだろう。


旧制官立高等商業学校は、東京の一橋と旧制高校から転換した山口を別にして、第二高商の神戸、第三高商の長崎、第五高商の小樽と、各地域を代表する貿易港に設置された。大分や高松も、城下町というよりも瀬戸内海の海運の重要港としての立地条件が誘致の決め手となった経緯がある。大分城、高松城とも海に面した平城であるというのを忘れてはならない。にもかかわらず、「県内就職先の囲い込み」にしか関心がないというのでは、創立以来語学を重視し世界に通用するビジネスマンの養成を使命としてきた旧高商としては伝統の断絶もはなはだしい。

文部科学省の「干渉」をやたら「曲解」して大学当局が迷走する姿は、ひとり大分大学だけのものではない。これに伴う混乱は、全国の地方大学の現場で多かれ少なかれ起きている現象である。四国においても、昨年高知大学、今年愛媛大学に「地域なんちゃら学部」の新設が決定され、さらに徳島大学も旧教育学部の総合科学部の改組が決まっている。

香川大学においても、「撓みなくわれらつとめて、高松の名のみならむや、日の出ずる国の光を、くまもなく世界に布かむ」と旧制高松高商校歌に歌い上げた士魂商才のスピリットを今後とも堅持してもらいたいものである。


旧制高松高商校歌

https://www.youtube.com/watch?v=AF3ZVLuRMdY



APU
別府市の立命館アジア太平洋大学


以下、大分大学経済学部と「四極会」の共同開催による就活支援活動である「学生と先輩との交流会」の記事を四極会HPより抜粋してみる。



>第3回学生と先輩との交流会開催される ≪大分支部主催≫平成26年11月5日(水)


 

大分大学H26
OBと学生の懇談風景(H26)


標記の交流会が11月5日(水)午後7時よりホルトホール大分大会議室で開催された。
 学生84名、先輩44名が参加し、経済学部長や四極会会長など来賓やスタッフを入れ、総勢150名による交流会となった。

 この会の趣旨は、就職活動前の学生と市内の職域に所属する先輩が交流し、学生へのアドバイスを先輩から受け、就職や社会への不安を少しでも解決しようというものである。
 学生と先輩を12のグループに分け、グループ毎に話してもらう形式で行い、途中メンバーの入れ替えなどを行い、多くの先輩と交流出来るよう配慮した。
 途中、各職域を代表して1名が職場紹介や学生へのアドバイスを述べていただくコーナーもあり、各テーブルでは熱心に質問する学生と親身にアドバイスする先輩の姿が見られ、今年も良い交流会となった。


(参加職域支部・企業)
大分県庁、大分市役所、大分銀行、豊和銀行、大分合同新聞社
大分県信用組合、大分放送、テレビ大分、大宣、オーイーシー、
大分トヨタ自動車、大分日産自動車、佐伯建設、トキハ、トキハインダストリー



>「学生と先輩との交流会」開催 ≪大分支部≫平成25年11月6日(水)


 

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開会時の風景(H25)


標記の会が11月6日(水)大分市のホルトホールで開催された。
 12月解禁の「就活」を前に、地元の役所や企業に勤める先輩から、大学の後輩に就活のアドバイスが出来ればという主旨で開かれた。
 当日は、経済学部の学生71名と社会人の先輩37名が一堂に集り交流を行った。
 経済学部の学生は3年生が大部分で、2年生5名も混じり活発に交流が行われた。
 大学からは、市原経済学部長や大崎就職委員長のご出席があり、経済学部職員と四極昭平会の若手会員のスタッフなどで運営が行われた。
司会は、高野副支部長と佐藤安洋氏(大32回)により行われた。
 穴井支部長と市原経済学部長の挨拶で始まり、その後の運営は全体を10グループに分けグループ毎に懇談を持った。
 テレビ大分のカメラも入り、翌日のニュースでその模様は流された。
 懇談や職場紹介、学生へのインタビューなどで2時間の予定時間は終了した。
 参加者にアンケートを配り感想や意見を求めたが、「大変有意義だった」との感想を多かった一方で色々なご意見もいただいた。
 次回には、より充実した交流会となるよう関係者と協議し、来年も実施する予定である。


>学生と県内企業同窓生との交流会 ≪大分支部≫平成24年11月7日(水)

(大分大学生活協同組合食堂特設会場にて開催)


 11月7日、大分大学生活協同組合食堂特設会場にて65名の学生と19の企業・団体からの同窓生39名が参加して開催されました。
 12月から就職活動が解禁となる前に、県内の有力企業や団体に所属する先輩と就職に関する話は勿論、社会人としての心構えなどについて話せる場を提供し、学生の悩みや課題を解決する機会になればと開催されました。
 結果、先輩諸氏や学生からは「大変有意義だった。」と評価していただき、大学側の市原経済学部長からも大変喜んでいただきました。


<参加団体・企業> (企業・団体名順不動)
大分県庁、大分市役所、大分銀行、豊和銀行、大分合同新聞社、大分県信用組合、大宣、大分みらい信用金庫、オーシー、大分放送、テレビ大分、オーイーシー、大分商業高校、大分トヨタ自動車、大分日産自動車、鶴崎海陸運輸、梅林建設、トキハ、トキハインダストリー


【参考資料 1】


《大分銀行の分大OB重役

副頭取・・・・・三浦洋一(大分大学経済学部1976年卒)

常務・・・・・・・菊口邦弘(大分大学経済学部1981年卒)


《豊和銀行の分大OB重役》

常務・・・・・・・玉井鉄之(大分大学経済学部1977年卒)

取締役・・・・・工藤俊二朗(大分大経済学部1984年卒)

取締役・・・・・渡部悌史(大分大学経済学部1984年卒)


東洋経済新報社「役員四季報」2016年版より抜粋



【参考資料 2】


滋賀大学経済学部HPより



>学部長からのメッセージ
経済学部長_小倉明浩  


一昨年秋、滋賀大学経済学部は創立90周年を祝しました。90年というのはほぼ1世紀にあたる年月ですから、あらためて本学部の伝統の重みを感じる出来事でした。と同時に、企業の創立記念日が、創立の原点をあらためて振り返って、その企業の現在のあり方を反省する機会であるように、本学部の原点を想い起すよい機会ともなりました。


(中略)


創立90周年記念行事であらためて痛感したのは、本学部が先輩たちの熱い想いに支えられているということです。本学部は彦根キャンパスにただひとつの学部であるだけに、総合大学と比べれば物足りなく思われるかもしれません。しかし、小さいからこその良さもあります。その典型が、このキャンパスで学んだ者の間に育まれる絆の強さです。しかも、同時期に学んだ者たちの間ばかりではなく、先輩の後輩に対する思いやりもすばらしいものです。こうして、現在も先輩たちが物心両面で本学部を応援くださっています。

 たとえば、本学部は創立以来の90年間に日本の一流企業に多数の人材を送り出し、そのなかにはトップ経営者層に上り詰めた方も少なからずおられます。そうした方々が、ゲストとして教壇に立って、自らの体験を語ってくださる授業が設けられています。そう簡単にはお会いできないような方々から、経済の現場の貴重な話をイキイキとおうかがいできるわけです。また、就職活動に際しては、先輩たちがほんとうに親身に助力してくださいます。さらに、社会に出てからも、企業内の先輩に助けていただくことは多いでしょうし、ビジネスの場で偶然出会った相手と、お互いに滋賀大学卒とわかって打ち解けるきっかけとなるといったことも生じます。


(後略)