香川大学の夜間部は、文科系の経済学部と法学部に夜間主コースとして設置されている。


前項の、長崎大学の多文化社会学部のところでも触れたが、かつて、全国の旧制官立高商系の経済学部、商学部には教育機会の提供のため、夜間の商業短期大学部が併設されていた。

時代が移り変わり、平成の今では夜間部や短大の存在意義が薄れてしまったが、香川大学ではこれに対応して社会人を対象とした昼夜開講制のMBAコースである地域マネジメント研究科を中・四国地方で初めて開設した。毎年、四国電力やタダノなど高松に本社を置く大企業や官公庁の大卒職員などを集め、教育のリカレント化に一定の成果を挙げている。

昨年、四国経済事情の講座で地域マネジメント研究科の教壇に立った日本通運の辻幸則常務執行役員も、経済学部卒業後に日通に入って、たまたま徳島の営業所に転勤したことから、夜間高松の母校まで通って修士の学位を取った。




辻幸則氏
母校で講義する日通の辻幸則常務執行役員 


これに対して商業短大は、定員規模を大きく縮小して現在は経済学部と法学部に包括され、その夜間主コースとなっている。

香川大学の場合、定員は20名と10名という最小規模であり、また受験にあたっては有職者(または内定者)であることが前提とされるため、入試も小論文と面接のみで偏差値も予備校のリサーチには現れない。こういった受験上の資格制限がないと、岡山大や愛媛大のように昼間主コースの単なるすべり止め扱いになってしまうからである。

ただ、もともと在籍人数が少ないうえにバイト以外の有職者も多いため、夜間主コース生単独の就職実績はなかなか表にあらわれにくい。しかし、筆者も商業短期大学部時代のOBを個人的に何人か知っているが、数少ない卒業生のなかから、そこそこ企業の中堅どころとして活躍している。


今朝の日経新聞が取り上げた「こだわり麺や」を展開するウエストフードプランニングの小西啓介社長は、この経済学部夜間主コースの前身の香川大学商業短大部から、幹部に香川大出身者の多いことで知られる日本ハムを経て脱サラして起業した。

敢えて味にうるさい香川県民を相手にして、東西に展開。全国展開の大手チェーンさえ尻込みする「低価格、本物志向」のお客を相手に真っ向勝負を続け、さらに海外展開も模索するという、注目のチェーン店経営を行っている。

本場の厳しいお客に応えるべく麺やネギといった素材にこだわるいっぽう、香川大学農学部が開発した希少糖レアシュガースイート入りの「希少糖万能だし醤油」を開発するなど、ユニークさもアピールしている。

http://www.kodawarimenya.com/kodawari/index_01.html



>ウエストフードプランニング社長小西啓介氏――うどん店育成粘り腰、のれん分け、地域に根ざす(かける四国人)


2015/04/09 日本経済新聞 地方経済面 四国 12ページ より

 セルフ式の讃岐うどん店「こだわり麺や」を展開するウエストフードプランニング(香川県丸亀市)が従業員の独立を促す独自ののれん分け制度を軸に、激戦区の本場・香川県内で店舗を広げている。うどん好きが高じて起業した社長の小西啓介(43)は「外食大手に負けない究極の個店の集合体」を目標に、新たな飲食チェーン像を探る。


 8日、香川県観音寺市に同社11番目の店舗がオープンした。3月に高松市内の幹線道路沿いに出した店舗とともに、店長は独立を前提とした社員。順調であれば半年後にはオーナーとして店舗や設備を会社から取得する。高松市内の新店の店長は「ここがスタートライン」と意気込む。


 同社の独立支援制度は最初は直営店として開業資金をすべて本社が負担するところがユニークだ。オーナー候補の店長は本社の指導を受けながら営業を軌道に乗せる。同時に金融機関から融資を受けられるだけの信用を高め、店舗を買い取る。入社から開業までは最短で18カ月。独立後も会計管理や食材供給は本社が担い、オーナーが営業に専念できるようにする。
 店舗を手早く増やすには本部の関与が強いフランチャイズ方式が有効だが、同社は社員へののれん分けを選んだ。飲食業界では全国チェーンが席巻する中でも地域に根差して支持を集める繁盛店が存在感を保つ。「結局勝ち残るのは店や従業員、顧客への愛情が強い個人店」。そうした店舗を増やし束ねることで、強いチェーンを目指す。


 「空腹を満たすだけでなく、元気になってもらえる店」。そんな理想を掲げ自らも17年前に脱サラした。麺やだしに試行錯誤を重ね、薬味に欠かせないネギを自社農場で育てるなど、店名にもあるこだわりで、うどんにうるさい香川県内で人気を高める。2015年9月期の売上高予想は10億円と、前期比で約2割の増収を見込む。
 人材も育ってきた。約40人の正社員の8割が店舗営業に関わっており、その多くに独立を促す。今後2年間で新たに10店程度を独立支援で出店し、県外にも打って出る方針だ。


 海外出店も進める。13年に台湾、14年にマレーシアに進出。欧米でも物件視察や市場調査に取り組む。ただ、海外では現地資本などに看板や運営ノウハウ、食材などを供給するフランチャイズチェーンを中心とする。当初は本格的な讃岐うどんを提供する方針だったが、「根付くには大胆な現地化も必要」と、国内とは異なる戦略を練る。
 台湾の店舗は5日に閉店を余儀なくされた。台湾では福島での原発事故後に日本の一部から食品の輸入を禁じているが、それら地域の食品が生産地を偽って流通していたことが判明。現地の提携先がその騒ぎに巻き込まれたためだ。運営会社を独資に切り替えるなどして営業再開を急ぐ。
 生まれ育った香川で、競争の激しいうどん店での事業拡大を目指す小西。当面の目標である100店の達成に向け、起業の原点である「自分が行きたい店」を追い求める。=敬称略
(高松支局長 真鍋正巳)


 こにし・けいすけ 1971年(昭46年)香川県坂出市生まれ。93年香川大学商業短期大学部卒、日本ハム入社。食肉事業部で営業職を経験後に退職。98年に「こだわり麺や」を創業。香川県内で11店、マレーシアで1店を展開。農業など周辺事業にも積極的。

ウエストフードプランニングの社長インタビューVTR
http://buzip.net/kagawa/westfoodplanning/president/

「Buzip+香川」より