センター試験も秒読みになってきた。ここで、受験生の参考資料として、再び前掲の週刊「東洋経済」の『ニッポンの大学 トップ100 本当に強い大学2010』を取り上げてみよう。
《『ニッポンの大学 トップ100 本当に強い大学2010』における中・四国の大学》
総合順位100位までにノミネートされた中・四国の国公私立大学
総合ポイント
15位 広島大学 54.9
32位 岡山大学 53.0
39位 香川大学 51.9
47位 愛媛大学 51.4
69位 松山大学 50.5
79位 山口大学 49.9
80位 高知大学 49.8
(参考)
10位 神戸大学 56.8
21位 名古屋大学 53.8
34位 中央大学 52.6
38位 立命館大学 51.9
44位 熊本大学 51.7
52位 長崎大学 51.3
57位 青山学院大学 50.9
61位 上智大学 50.8
67位 法政大学 50.5
誤解されては困るのは、これは大学を外から評価するための「たくさんあるひとつの物差し」だということである。つまり、各大学の「総合力」を投影して評価した結果、研究力や偏差値、就職力など個々の評価とは、まったく違った姿に映っているということである。
早い話が、大学を「企業体」として見た場合、「財務」の健全性という指標がある。国立大学も独立行政法人化された以上、少子化や国の補助金の削減の影響により、今後は存続できない国立大学も現れてくるということである。
この「事業」としての健全性を加えて、教育力、研究力、学生の質等を総合的に評価したのが上の順位ということになる。このため、学生の質としては最上位に評価されている上智大学など文学・語学系比率や女子学生比率の高い私立大学は、国立大学に比べて相対的に科学研究費補助金が少なく教員一人当たりの学生数も倍以上と教育条件が悪いため、昨今の就職氷河期における女子学生の就職率の低さとあいまって61位という低い評価になっている。
逆に、理系が看板の大学が絶対に有利かというと、名古屋大学のようにノーベル賞研究者を輩出した実績のある大学でも、「企業体」としての自己資本比率が他の旧帝大に比較して極端に低い(上位75校で最下位)ことが災いして総合21位(北大は14位、九大は8位)と予想外の評価にとどまっている。つまりは、「事業」としてのバランスの問題であろう。
さて、そこで中・四国の大学である。
一見して注目されるのは、100位内にはこの地区の公立大学は1校も入っていないことである。私立大学も愛媛県の松山大学ただ1校だけで、松山よりも人口の多い広島や岡山の私立大学は圏外である。
下関市立大学や広島修道大学のようにそれなりに伝統と実績のある大学もあるのであるが、全国的に見れば総合力で劣るということであろう。むしろ、中・四国地方は伝統的に国立大学重視の土地柄だということが如実に反映されている。
順位的には、バブル崩壊前に郊外の新キャンパスへの移転を果たし、国の重点大学として研究施設を多く抱える広島大学が一頭地を抜いている。この総合順位では、指標的にどうしても「総合力」にまさる総合大学が評価されやすい傾向にあるが、このため学部数の多い広島大、岡山大が上位ということになる。この点、四国の国立大学は愛媛大と香川大が6学部、高知大と徳島大が5学部で拮抗しているが、理系偏重の徳島大が圏外であるのは意外である。残り3大学のうち財務内容と就職率にまさる香川大が39位、逆に財務内容と就職率で劣る高知大が80位とそれぞれに差ができた。
松山大学は地方の私立大学としては検討しているが、評価されたのは自己資本比率90.3%を誇る財務の健全性で、むしろ過去の蓄積と経営努力の評価が大きい。今後、少子化による志願者数減少のなかで、新設の薬学部を抱えてこの健全性を維持できるかどうか懸念されるところである。
国立大学法人化によって、大学が「事業体」としての自主性を持って大学を運営できるようになったのは事実である。数十年来、学部学科の増設等で箱モノが新築される以外ほとんど変化がなく、私立大学に比べて「汚い、ボロい」と酷評であった各国立大学のキャンパスも、法人化以降営繕がきちんとなされるようになり、古い教室のリニューアル工事が各地ですすんでいる。香川大学では、数年後の「教養学部」の新設に向け準備中だという。これもひとつの「目に見える進歩」であるかもしれないが、百戦錬磨の私立大学の経営陣に比べて、国立大学の場合は研究者が片手間に行う「素人の経営」であることは否定できない。
将来、母校がどうなってゆくのか、それも志望校選択のひとつの考え方であろう。