病室の花嫁 | ZERO 「不都合な…」

ZERO 「不都合な…」

イザ!で不都合な…というブロガーだったZEROです。
不都合な真実であろう事柄を気まぐれに綴っていく。

10年前、夫の実家に結婚の挨拶に行った時、初孫の結婚を誰より喜んでくれた夫の祖父。その1ヶ月後、祖父に末期ガンが見つかった。


そこから嘘みたいにガタガタと体調を崩し、祖父は入院して寝たきりになった。


結婚式は翌年の予定だったのだけど、義母たっての希望で前倒しできる式場を探した。


その間にもどんどん祖父の容態は悪化していき、祖父は眠っている時間が長くなった。結婚式に出席するのはもう難しそうだった。


「結婚式は予定通りでいいから、じいちゃんに見せるためにこっちで和装の前撮りをしてほしい」


義母から頼まれた。

残された時間は少ない…夫と私はその週末に帰省した。


夫一家が昔からお世話になっている写真館で和装の前撮りをした。写真を撮り終えた後、義母は意を決したように言った。


「このまま病院に行って、じいちゃんに二人の姿を見せてあげてもらえない…?」


義父は反対した。病院には色んな病状、環境、心境の人がいて、快く思わない人もいるかもしれない。


義父に反対され、義母は言葉をつげずにいた。すると普段は無口な夫がはっきりと


「俺はじいちゃんに見せたい。行こうよ、行かないとお母さんは一生後悔する」


写真館のおばちゃんたちもよーし!じゃあ急いで行こう!ほらお嫁さん裾気をつけて!と介添してくれて、みんなで病院に駆けつけた。


病院の許可を得て、私たちは祖父の病室に向かった。


紋付袴と白無垢で病院の廊下を行進する一団。異様な光景に、人が次々に病室から顔を出してくる。


祖父の病室について夫が声をかけると、酸素の管をくわえた祖父は目を開け、言葉は発せないけれど、「うう…うう…」と涙を流して夫の手を握った。


義母は泣いていた。私はなぜか泣いてはいけない気がして、無理に微笑んでいたと思う。


祖父の病室を出たら、驚いた事に、たくさんの患者さんとお見舞いのご家族たちが廊下に出て、私たちを待っていた。わあ!お嫁さんだ!おめでとう!たくさんの人が満面の笑みで私たちを拍手で見送ってくれた。


まるでそこが病院じゃないみたいに明るい時間だった。初めて会った人からこんなに「おめでとう」をもらったのはあれが最初で最後だと思う。


それから1週間も経たずに、祖父は旅立ってしまった。あの日義母と夫が決断してくれた事を、10年経った今も、私は、そしてきっと義父も、心から感謝している。


https://twitter.com/rununculus123/status/1231029989501362177?s=21


僕の父は僕が高三のとき48歳で亡くなりました。受験をひかえていたので回りは前日まで父の病いの重さを教えてくれなかった。時間には限りがあるんですね。若い人には両親、おばあちゃん、おじいちゃんの時間も大切にしてあげてほしい☺良いお話しありがとうございます🌹


https://twitter.com/falcon09051/status/1231151691153596416?s=21