吉本:「なりゆきに任せるしかない」
自分で「ああしよう、こうしよう」と思ったら、ぜったいダメですね。
小説を書くということ自体、そういうものなのでしょう。
大概のことは、そんなような気がします。自分で「ああしよう、こうしよう」と目標を持ってやったら、たいていだめです。
来たものになんとなく応えていく。「時が経っていった」という感じの方が、うまくいくような気がします。
河合:ぼくは生き方自体がそうです。自分の意志で、ほとんど生きていない(笑)
来たものに乗っては、ふわふわやってる。(P196)
吉本:「偶然性に頼る」というのが全てです。
前もってあまり組み立ててもだめだし、ちょっとしたときに、ひらめきがないと。
それをパッとつかまえられるかどうかは、自分の感度の問題ですから。(P203)
それと、「自分をたのみにする心」がとても大切なんです。
それは自分に自信を持ちすぎるのでもなくて、いざとなったら自分がなんとかするだろうという「自分をたのみにする」こと。
それがあれば、結局最後は勝つというか、うまくいくような気がします。(P204)
河合:ぼくは自分でなんにも起こしてない。偶然に起こったことに、ふわっと乗るだけだからね。
ただ、そういうときに、やっぱり「乗る」というか、「エネルギーを結集する」というか、それが必要なんですよ。
それを、ちょっとでも間違ったらあかんけど。偶然は自分が起こすわけやないからね。(P209)【了】