海を見下ろす住宅地『うつくしが丘』に建つ、築21年の三階建て一軒家を購入した美保理と譲。一階を美容室に改装したその家で、夫婦の新しい日々が始まるはずだった。だが開店二日前、近隣住民から、ここが「不幸の家」と呼ばれていると聞いてしまう。―それでもわたしたち、この家で暮らしてよかった。「不幸の家」に居場所を求めた五つの家族の物語。

 

 

連作短編集で、章が移るごとに主人公が前章の一代前の入居者となり、時間を遡る形で歴代の住人たちの物語が編まれていく。それぞれ異なる事情があり、家族構成もバラバラ。

各章のちょっとした描写の謎があるが、章が進むたびに「そういうことだったのか」と思わせる仕掛けも。

(解説より引用)

 

各家族は、それぞれに問題を抱えていながらも、それでも懸命に向き合い生きていってる。

全編を通して共通に登場する人物である隣人の荒木信子。

信子の優しさに救われる思いがするが、実は信子にも事情があった。

この家の最初の住人である第五章の物語の中で「ひょっとして?」と感じることがあって。

エピローグを読むと「やっぱり」「そういうことか」と繋がって。

上手い作りだなと思ったニコニコ


信子の言葉で

「しあわせは人から貰ったり人から汚されたりするものじゃない」とあるが、


それでも美保理の言うように

「しあわせはやっぱり、人から貰うこともある」とも思う。


幸せかどうかは他人ではなく私が決める。

厳しい現実もあるが、前を向いて歩いて行けるよう後押ししてもらえるような作品だと思うニコニコ

 

 

~心に残った言葉~

 

「たったそれだけ。そういうことって意外と多いのよねぇ。一生乗り越えられないだろうと思ってた問題だって、あるとき急にぱっと拓けたように解決することだってある。それって見る角度とか自分の心持ちとか、こんなことで?って笑えちゃうような些細な理由だったりするの」

 

「しあわせなんて人から貰ったり人から汚されたりするものじゃないわよ。自分で作りあげたものを壊すのも汚すのも、いつだって自分にしかできないの。他人に左右されて駄目にしちゃうなんて、もったいないわよ」

 

「ひととひとの繋がりって、一本の糸じゃないのよ。いろんな縁が交差して絡み合って、独自の模様を作りながら太くなっていくの」