突然失踪した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の柳瀬誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る...

痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望(きぼう)」を探す優しいエールに満ちた物語。

 

 

小説のタイトルは「のぞむの行方」と読むのかなと思ってたけど「きぼうの行方」と読むそうで。

「へえ~、そうなのか」とニコニコ


人が誰しも持っている認めたくない目を背けたくなるような感情が登場人物を通して描かれ、心がザワツキ、ザラッとする思いに駆られる。


子供の頃から常に両親の顔色を伺わざるを得なかった柳瀬兄弟。



ある人物が希望の事を評した言葉


「期待に応えようとしすぎる。たぶん相手の欲しがってるものがわかりすぎるんでしょう。自分には関係ないと無視することもできない」


「他人が欲しがってるものをひたすら差し出し続ける人間は、きっとどんどん心が空っぽになっていくんです。自分の意見じゃなくて相手の言ってほしいことを勝手に汲み取って口にするような、他人の欲求を際限なく受け止めようとするやつは、それこそ妖怪かなんかの類に思える」



希望の語りが書かれてなく、想像する事しか出来ないが、相手を受け止めようとする余り、自分の本心そのものが分からなくなってしまったのかもしれない。


希望には、誰かに何かを放り込まれる前に自分で満たしていって欲しいと思うし、私もそう在りたいと思ったニコニコ




~心に残った言葉~

 

「誰がなにを思っても自由じゃないの?他人の心は他人のものなんだから」

 

「悪い人も良いことをする時はあるし、良い人の頭の中にもずるい考えはあるし、強い人も傷つくし、弱い人がその弱さを盾に他人を攻撃することもあります」

 

実像とはなんだろう。自分の思う自分こそが実像なのか。人はそんなにも正しく自分の実像をとらえられるものだろうか。外見すら鏡や写真や映像を通してでなければ確認できないのに。

 

でも空っぽであることは、これからいくらでも好きなもので好きなように満たせるということでもある。