映画『LOGAN/ローガン』が公開されました!
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』が最高のLORD MOVIEなら、こちらは最高のROAD MOVIE。僕は大好きな作品になりましたが、「中盤勢いが落ちる」などの声も。これには構想段階の最初から監督が基にしていたあるコメディ映画が関係しています。あと、最後に流れる曲は字幕が出ませんが、ローガンの終着点について答えを暗示するものになっていて、映画全体を貫くキリスト教的テーマに繋がっています。そこら辺のことをレビューします。
目次
【西部劇×ロード・ムービー】
【『リトル・ブラッディ・サンシャイン』】
【エンディング・ソング「The Man Comes Around」】
【許されざる者、ローガン】
【ローガンが辿り着いた“エデン”】
監督、脚本/ジェームズ・マンゴールド『3時10分、決断のとき』
血飛沫、F**K、スペイン語が飛び交う夜のオープニング。
今回はこういう映画だ。そう宣言して幕を開ける。
何でもありのR指定かと思いきや、車が突っ込んでも有刺鉄線は破れない。
有刺鉄線は牛追いのカウボーイに代わって発明された道具らしい*。

カウボーイが消え行く西部劇のように、ここもミュータントが消えつつある世界だ。
*町山智弘氏の映画ムダ話『シェーン』参照。
【西部劇×ロード・ムービー】
数々の西部劇に影響を受けているとマンゴールド監督は公言している。
直接引用される『シェーン』('53)老いと贖罪のテーマ『許されざる者』('92)少女との旅『ガントレット』('77)『ペーパームーン』('73)物語後半は『11人のカウボーイ』('72)。
因みに後半で合流する子供達はローラを含めて11人。
その圧倒的存在感を放つローラ(ダフネ・キーン)はローガンを導く小さな太陽だ。
【『リトル・ブラッディ・サンシャイン』】
“ウルヴァリンが出る血まみれの『リトル・ミス・サンシャイン』が作りたかった”
ジェームズ・マンゴールド、bfi.org.uk
ロードムービーとして参考にしたのがこの作品。ジジイと少女を後ろに乗せてオヤジが旅する構図もさることながら、日常を切り取るような描写(スライス・オブ・ライフ)が随所に見られる。
チャールズをトイレに連れていく…充電器の為にコンビニに寄る…本筋から逸れた描写はハリウッド大作には珍しい。
←父を介護する息子にしか見えない…
「神の様なヒーローの生き様を人間味たっぷりに見せたかった」と監督は言う。
映画のタイトルは『LOGAN』。『ウルヴァリン』ではない。
超人ではなく人間を、家族を、一人の男が父になる旅路を描いているのだ。
でもまさか少女がニーチェの影響で「無言の誓い」を立てたなんてことはないだろう…

【エンディング・ソング「The Man Comes Around」】
ジョニー・キャッシュのこの曲は黙示録こと聖書の啓示の書が基になっている。The Man=キリストの「最後の審判」についての歌だ。
“名を記しながら駆け巡る男がいる
救う者と罪人とを定めるために
聞け ラッパの音を 笛の音を 無数の天使たちが歌っている
叫び声と泣き声とがある 生まれる者と死にゆく者とがいる
最初であり最後の王国の到来だ”
「The Man Comes Around」より
映画『フェンス』はオーガスト・ウィルソンの戯曲をデンゼル・ワシントンが映画化した傑作。
普通の黒人家庭を通して古き良きアメリカの暗部を描いている。主人公は悪人に見えるが、背景に黒人差別が見え隠れする。
彼には戦争の後遺症で知的障害を抱えた弟がいる。弟はいつもトランペットを持ち歩く。最後の審判が来た時、愛する人達がキリストに受け入れてもらえるように。トランペットが吹かれなければ天の門は開かれないと信じているのだ。
一方の兄は自分の罪と死神に怯え、歯向かって生きている。
「死神め、いつでも来い。でも俺は手強いぞ」
審判の日、彼にトランペットは鳴るのだろうか。

Xメンはマイノリティをミュータントに置き換えた話だ。そしてローガンもまた、罪を背負っている。
【許されざる者、ローガン】
“サウロ、サウロ…突き棒をけりつづけるのは、あなたにとってつらいことになる” 使徒26:14
「The Man Comes Around」で引用されるのこの言葉は、キリスト教徒迫害の中心人物だったサウロ(後の使徒パウロ)にキリストが語ったもの。迫害を続けることは“突き棒をける”ようなものだと。
突き棒:家畜の誘導に使われた農耕具で、棒の端には棘のような尖った金具が付いていた。棒を蹴ったりすれば当然自らを傷つけることになる。
ローガンにとって突き棒とは何か?
老いや死に逆らう事か。普通の生活を求める事か。愛を望む事か。
真人間になろうともがいても、過去の罪が追ってくる。まるで影のように。
影の名はX-24。立ち向かう度、その老体に“棘”が刺さる。それは自らの棘だ。
許されざる者は突き棒をけり続ける。
“人を撃った男に平安はない もう戻れないんだよ
殺人者の烙印は 一生消えないんだ”
映画『シェーン』より
【ローガンが辿り着いた“エデン”】
ローガンはずっと孤独な男だった。
チャールズは言う。「君は本当の人生を経験すべきだ」と。
長い旅路の果て、死神が戸を叩く時、天の門は開くだろうか。ラッパや笛は鳴るだろうか。
重要なのはローガンの目に映るもの、心に残る最期の光景だと思う。
ローラの流す涙、まだ小さな手から伝わる温もり、その正体は「愛」だ。
男の魂は救われた。少なくともひとりの少女の中で。

ラスト、ローラの手によって十字はXに変わる。
その生き様はしっかりと刻まれ、受け継がれるだろう。
「The Man Comes Around」ノーカット版では最後に聖書の言葉が朗読される。男の結末だ。
“見ると 見よ 青ざめた馬がいた
それに乗っている者には“死”という名があった
そして 地獄が彼のすぐ後に従っていた”
「The Man Comes Around」アウトロより、啓示6:7,8






