今回ディスクレビューするのは
Superfly『0』
4年半ぶり6枚目の今作は11曲中9曲がタイアップであり、初めて越智志帆が詞曲の大半を手がけた。
超絶個人的な話になるが、今までいくつものアーティストを生で観てきて思う日本三大歌うま女王は
・和田アキ子
・MISIA
・Superfly
ですね〜
和田アキ子とMISIAは圧倒的ファンク。心の底から震える歌声は生で聴くと感涙。
一方SuperflyはJ-POPの女王といったところ。
2018年のロッキンでのSuperfly→サザンオールスターズという流れはJ-POPの頂点を体感できて最高に楽しかった!
というなんやねんという前置きはここまでにして…
何が言いたいかというとSuperflyといえば「タマシイレボリューション」や「愛をこめて花束を」に代表されるように日本のポップス界に君臨する魂の女王、というのが世間的なイメージである。
その世間的なイメージに逆らわず、5枚目までのアルバムも魂に訴えかける力強い印象だった。
しかし、今回のアルバムの印象は前作までとは全く違う。
魂をぶつける曲たち、というよりは魂を優しく包み込むそんな曲たち。バラードが中心という意味ではなく、今までのSuperflyとは違ったジャンルレスな曲の数々が本当に聴き心地がいい。
「覚醒」は曲を通してミステリアスな展開、先が読めないスリルさが痛快である。
「Fall」はスウィング・ジャズ調で越智志帆の伸びやかな声がリスナーに強さと同時に癒しを与えてくれる。
かといって以前のSuperflyの印象を全て捨て去ったというわけではなく、「Gemstone」や「Lilyの祈り」なんかを聴くと活動休止期間前の力強くも儚いSuperflyを連想させてくれる。
ライブ活動休止期間を経て、越智志帆がSuperflyというアーティストとの向き合い方を見つめ直すことができたのが間違いなく大きいと思う。
Superflyというある種の「非自分」から解き放って越智志帆=「自分」という絶対軸を手に入れて、越智志帆自身がシンガー、そして創作家越智志帆であることを全力で楽しんでいることがヒシヒシと伝わってくるのだ。
越智志帆は音楽ナタリーのインタビューで『0』というタイトルについて
"ゼロという概念は無限の可能性がある"
"お客さんを癒やしたいと思うんだったら、私が癒やされる状態じゃなきゃダメだと思った"
と語っている。
個人的にアルバムの中で1番好きな曲は「氷に閉じ込めて」である。インタビューで語っているこのアルバムの核となる部分、自己愛や力強さだけでない女性としての隙と自由を見せた瞬間の輝きが見事に表現された素晴らしい曲である。
君は氷のように 冷たいけど
炎のような愛じゃ 解けちゃうけど
魔法にかかるなら まだ愛してもいいかな
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解けないわ 泣かないわ
美しき氷の鎧
最後まで君を待っている
(#8 氷に閉じ込めて)
今の向こうは 次のフェーズ
ゼロな私で勝負したい
(#3 Gemstone)
魂を剥き出しに時代に抗ってきたポップスの女王が「全ての愛を、そして自分自身を温かく抱きしめるポップスの女王」という次の高なるフェーズへと歩みを進めたことを証明した傑作。