「心を持った大腸菌の恋物語」 岬 真之 アマゾン・クリンドル出版:販売中

 

あらすじと初めの部分抜粋

 

 この作品の筆者は本物の細菌学者である。大学で35年間医学生に微生物学を教えて来ている。今回は、講義ノートをベースにして、腸内細菌の世界を描いてみた。という訳で、このSF本は手ごろな参考書として読んでもらっても差し支えない。

 

心(意識)を持った大腸菌の誕生

 俺は大腸菌と言う細菌なのである。細菌と言うのは、英語ではバクテリアと言うのだが、俺たちの祖先がこの地球上に誕生してから、かれこれ39億年も経つんだけど、最初の生命体に最も近いのが細菌だとされている。細菌は親の細胞が二つに分かれて増殖して行くので、そうやって増えた仲間がたくさん集まるとクローンと言うものになる。要するに元の1匹の親の細菌から分裂した子孫と親の集団をまとめてクローンと言うのだが、みんな1つの親細胞から派生するので、基本的には遺伝子が同じなのである。中には変異と言うものを起こして、他の大多数の仲間とはちょっと違った遺伝子を持つものも出てくることがある。人間たちの細菌学と言う学問では、こいつのことを変異株と呼んでいる。

 ところで、大腸菌の特殊な変異株である俺様がいつごろ生まれたのかは定かではない。俺の数10代ぐらい前の細胞分裂の時に俺の親の大腸菌から生まれて来たらしい。

それから、

「何で最下等生物の細菌であるお前が一人前に人間の言葉を知っているのか。」

と疑問に思う読者がいると思うけど、それは俺にも正直分からない。

どんな理由があったのかは知らんが、1ヵ月ほど前から俺だけが人間様と同じ意識(心みたいなもんんだ)を持つようになり、俺は自分のことを俺として認識することが出来るようになったんだ。真実は小説より奇なりと言う諺があるように、すごく不思議なんだけど、本当にそうなんだから仕方ない。

 

 こんな具合に、このもの語りは展開していく。どうして大腸菌が意識を持つに至ったのかは、物語の結末で分子生物学的視点で語られる。途中、二匹の雌雄の大腸菌の恋物語が進行していく。生物学関係の大学生には読みこなせるだろう。頭の良い子だったら、中高生にも楽しめるかと思う。