国語辞典には見あたらないが、「盤寿」という言葉がある。
将棋の棋士は81歳で盤寿を祝う。
将棋の盤のマス目(9×9=)81は棋士にとって特別な数字であるらしい。
「81」がひときわ輝いている。
羽生善治二冠が棋聖位を防衛した。
獲得したタイトルは通算81期となり、故大山康晴十五世名人の80期を抜いて、最多タイトルの記録が塗り替えられる。
まだ41歳である。
~中略~
41歳といえば、盤寿までの道のりのちょうど折り返し地点である。
「自分なりに工夫し、結果として記録が伸びていけば…」とご本人は至って謙虚だが、100の大台も夢ではあるまい。
職場の書棚に卓上の屏風が置いてある。
竜王戦25周年を記念したもので、歴代の竜王が揮毫している。
渡辺明竜王・王座の〈志高〉、森内俊之名人の〈勇断〉などと並んで、羽生さんの〈玲瓏〉が墨痕鮮やかである。
玉が透き通り、光り輝くさま。
将棋界におけるその人の存在そのままだろう。
読売新聞 平成24年7月7日付朝刊より