まだ本調子ではなさそうなこの猫ちゃんなのですが…最初に来院したときには元気も食欲もなく、喉の右側がかなり腫れていました。
体温は40.7度もあったため、腫れている所を注射針で刺すと、膿がたくさん出てきました。
室内のみで飼育していたのですが、多頭飼育だったため、猫同士のケンカによる化膿病変(猫の咬傷~膿瘍)であろうと考え、消毒して抗菌薬を処方しました。
膿瘍だけであったら元気になるはずなのですが、翌日になるとなぜか何度も吐くようになってしまったそうです。
嘔吐する副作用の少ない抗菌薬を使っていたため、「薬が合わなかったにしても、こんなにゲッソリするのか?」と考えていると…
猫ちゃんを保定していたスタッフが言いました。
「何か…この辺が出っ張ってます」
この写真は麻酔をかけて切開した後なのですが、何もないはずの所がテント状にふくらんでいたのです(毛の長い子だったこともあって、周辺の毛を切らず大量の膿がたまっているとわかりにくい)。
皮膚の上から触ると、長い骨のようにも感じられ「骨でも刺さっているのか?」と思ったのです
が、麻酔をかけて切開するとキラリと光るものが出てきました!
前回の子(喉の傷?)よりも太い針で、どういうわけか?出っ張っていたのは尖っていない糸を通す側でした(口腔側からは針は見えず)!
切開後、軽く引っ張ったら針だけはぎりぎり出てきたのですが、かなりの抵抗を感じます。
そのため、もう一度口腔内を確認してみると…右側に沿ってかすかに黒っぽい糸が見えました。
口腔側から糸を注意深く引っ張ってみると、なんとか抜き取ることができそうです。
(◎長いと腸に絡みついていることもあるので、やみくもに引っ張るのは危険!!)
通過障害がないことを確認し、慎重にゆっくりと引いていくと、とうとう糸つきの針が出てきました。
飼い主さんの話によると、まだ幼い娘さんが裁縫をしていたそうで、どこかに置きっぱなしにしていた可能性があったようです。
この猫ちゃんは、とっても元気な子で、針が取れてから生まれ変わったように活発になりました!!
上の写真のように、取り除いてから1日で「あそんで!あそんで!」と手を出してきます。
おそらく、この活発さがあるから糸つきの針にじゃれつき、勢い余って飲み込んでしまったのでしょう。
そして常識的には刺さりにくいはずの糸を通す側であっても、ジタバタ暴れているうちに貫通してしまったのか…と思われました。
それにしても、どんな力学によってあんな刺さり方になったのか不思議です。
糸つきの針を飲み込んで刺さる場合、上の動画のようなケースが多いと思われます。
しかし前回説明したように、運よく刺さらないで出てくるケース、喉付近から出てくるケースもあり、今回のようなイレギュラーなケースもあるので触診や口腔内の視診の大切さを痛感しました(針のような金属の場合、レントゲンでも確認できます)。
この子は元気なだけでなく、とても人懐っこく、喉の周囲はまだ痛いはずなのにその辺りをすりすりし、やさしく撫でるとゴロゴロゴロとこのとろけ顔でした。
1週間後には針の刺さった所も排膿した傷も目立たなくなり、体重も増えてとても快適そうでした。
元気キャラな子って、調子が悪くても頑張り過ぎちゃったり、飼い主さんも「まあ、この子はいつも元気だから大丈夫だろう…」という先入観で見てしまったりして発見が遅れるケースも時々あるのでお気をつけ下さい!!
あまり神経質になるのも考えものですが、経験からくる先入観にとらわれず、その日その日の本質的なサインをキャッチできたらいいですね!
今回はスタッフが気づいてくれたので、とても助かりました!!







