仕事帰り。
電車に乗って本を読んでいた。
ちょうど退勤ラッシュでもあったので
そこそこ混み合った状態。
とある駅で乗車してきたのであろう人が隣に立った。
チラッと横目で見たけれど
女性で
前抱っこで赤ちゃんを連れていた。
赤ちゃんは少しグズり気味。
まあ、赤児にしてみれば
いきなり、知らない人が大勢いる空間に来たわけで
メソメソしたい気持ちも良く分かる。
僕だって、今でこそ慣れたけれど
社会人なりたての頃は
こんな満員電車に乗らなきゃならんのか!?と
超絶人見知り発動でシクシク泣いていた。
ママさんは必死に赤ちゃんをあやしている。
こういう時は「大丈夫、大丈夫」みたいな感じで
ぜんぜん気にしてないですよ感をアピールする。
だって、仕方ないじゃんね。
赤ちゃんは泣くのが仕事だし。
…
…
一応、本を読んでいるフリをしているけれど
心半分は赤ちゃんの動向に持っていかれている。
ママさんには遠く及ばないけれど
「オムツか?お腹が空いたか?」と
僕は僕なりに心配し始めていた。
すると、突然
赤ちゃんはギャン泣きし
「パパァァァーー!!」
え?
パパさんも乗ってるの?
と思ってパッと横を見ると
赤ちゃんは泣きながらこっちに顔を向けている。
え?
…
…
お、俺?
いやいやいやいや
思わず逆側を振り返った。
…
車両の端だから誰もいない。
てことは
この赤さんは僕に向かって言っているのか?
…
…
いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。
この赤さんは2歳にはなっていないだろう。
過去2年間ほどの行動履歴を頭の中で展開してみる。
…
僕には覚えが
…
…
いや、ない!(と思う
そんなことをグルグル考えていると
赤さんは更にヒートアップして
ヒィーヒィー泣きながら
短い腕を一生懸命に伸ばして僕の肩をガシっと掴んだ。
…
…
おおおお…息子よ!!
(たぶん男の子だと思う)
一瞬、車内に感動の再会を祝福するような空気が
流れたような気がしたけれど
も、申し訳ないけれど皆さんの勘違いっす。
僕はパパじゃないです。
平謝りするママさんに
「いやいや、大丈夫ですよ」と答えながら
いろいろ頭に浮かんだ。
僕の理想では
オモチャとして野球のボールを与えて
「ボールは友達!」と洗脳し
ゆくゆくは甲子園、プロ野球という道を歩ませたい。
気分は星一徹。お前は飛雄馬だ。
まずは甲子園を目指すか、坊主!
今のうちに散々泣いておくがいい。
練習中に流す涙が無いくらいにな。
…
…
ちゃぶ台をひっくり返すシミュレーションを
あーでもないこーでもないと考えていたら
僕が降りる駅に着いてしまった。
そうか、僕はパパじゃない。
赤ちゃんに手を振って電車を降りた。
