仕事帰り。

電車に乗って本を読んでいた。
ちょうど退勤ラッシュでもあったので
そこそこ混み合った状態。
 
とある駅で乗車してきたのであろう人が隣に立った。
チラッと横目で見たけれど
女性で
前抱っこで赤ちゃんを連れていた。
 
赤ちゃんは少しグズり気味。
まあ、赤児にしてみれば
いきなり、知らない人が大勢いる空間に来たわけで
メソメソしたい気持ちも良く分かる。
僕だって、今でこそ慣れたけれど
社会人なりたての頃は
こんな満員電車に乗らなきゃならんのか!?と
超絶人見知り発動でシクシク泣いていた。
 
ママさんは必死に赤ちゃんをあやしている。
 
こういう時は「大丈夫、大丈夫」みたいな感じで
ぜんぜん気にしてないですよ感をアピールする。
だって、仕方ないじゃんね。
赤ちゃんは泣くのが仕事だし。
一応、本を読んでいるフリをしているけれど
心半分は赤ちゃんの動向に持っていかれている。
ママさんには遠く及ばないけれど
「オムツか?お腹が空いたか?」
僕は僕なりに心配し始めていた。
 
すると、突然
赤ちゃんはギャン泣きし
「パパァァァーー!!」
 
え?
パパさんも乗ってるの?
 
と思ってパッと横を見ると
赤ちゃんは泣きながらこっちに顔を向けている。
 
え?
お、俺?
 
いやいやいやいや
思わず逆側を振り返った。
車両の端だから誰もいない。
 
てことは
この赤さんは僕に向かって言っているのか?
いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。
この赤さんは2歳にはなっていないだろう。
過去2年間ほどの行動履歴を頭の中で展開してみる。
僕には覚えが
いや、ない!(と思う
 
そんなことをグルグル考えていると
赤さんは更にヒートアップして
ヒィーヒィー泣きながら
短い腕を一生懸命に伸ばして僕の肩をガシっと掴んだ。
おおおお…息子よ!!
(たぶん男の子だと思う)
 
一瞬、車内に感動の再会を祝福するような空気が
流れたような気がしたけれど
も、申し訳ないけれど皆さんの勘違いっす。
僕はパパじゃないです。
 
平謝りするママさんに
「いやいや、大丈夫ですよ」と答えながら
いろいろ頭に浮かんだ。
 
僕の理想では
オモチャとして野球のボールを与えて
「ボールは友達!」と洗脳し
ゆくゆくは甲子園、プロ野球という道を歩ませたい。
気分は星一徹。お前は飛雄馬だ。
まずは甲子園を目指すか、坊主!
 
今のうちに散々泣いておくがいい。
練習中に流す涙が無いくらいにな。
ちゃぶ台をひっくり返すシミュレーションを
あーでもないこーでもないと考えていたら
僕が降りる駅に着いてしまった。
 
そうか、僕はパパじゃない。
赤ちゃんに手を振って電車を降りた。