手に汗握りながら読んで下さい。
一人の人間の苦悩です。
男はその朝、ゆっくりと目覚めた。
乱雑な部屋の片隅に在る、ファンヒーターのスイッチに手をかける。
ブオン
無機質な音とともに、噴出孔からは人工的な熱気が溢れ出た。
男はその朝、非常に憂鬱だった。
テレヴィ画面ではニュースキャスターが非正規労働者の雇用問題を
「所詮は他人事」という本音を巧妙に隠し、神妙な顔つきで伝えている。
社会に出て3年、この世は本音と建前でできているということを男は学んだ。
何の臆面も無く建前で生き、本音は腹の底の中に仕舞っておける奴が
出世をし、世の中を動かす。人間社会の鉄則だ。
今更、本音と建前を使い分けるメディアを見たところで、別に憤りを覚えるわけではないし、
不思議だとも思わない。
男はテーブルの上の煙草に手を伸ばす。クシャクシャになったソフトケースの
セブンスターは、男のささくれだった気持そのものだった。
自分の気持ちを落ち着けるように、ゆっくりと煙草に火を付け、深く煙を吸い込む。
体中の血管のニコチン吸収を感じながら、ゆっくりと男は煙を吐き出した。
煙とともに自らの心に潜む憂鬱も吐き出せたらと、毎朝思う。
今日も変わらぬ朝が来てしまった。
男は一度低く舌打ちをして、扉を開けた。
そのまま二歩ほど進み、男は座り込んだ。
憂鬱だ。
体が鉛のように重い。
しかしこうしてはいられない。
全身に力を込めた。肉体に鋭い痛みが走る。
やらねばならない。
たとえ会社では歯車の一部だとしても、社会に生きる者としてやらねばならぬことがある。
男の手には一枚の紙が握られていた。
この一枚で凡てにケリがつく筈だ。
全神経を指先へと集中させ、男は強く紙を握りしめた。
・・・
・・・気付くと、手には赤く染まった紙が握られていた。
赤い色は、生物にとって危険を知らせる色であると謂われる。
男はこの色を目にする度、自分がまだ生きていることを実感し、そして憂鬱になる。
男はこの憂鬱が何に起因するのか、既に気付いていた。
「本音と建前という世の中の真理」が男の心をささくれさせているのではない。
むしろ、
ささくれていたのは男の尻だった・・・
・・・・と、ハードボイルド小説風にで自分の痔を全世界に発信してみました。
くだらねぇオチだな、オイ。