地元紙のお悔やみ欄を見て、婆がやって来た。
隣組の爺が死んだらしい。
告別式の時間は、私は出張で家にはいない。
家内も仕事の時である。
隣組なので、葬式に行かないのは非礼に当たる。
暇なのは、婆である。
告別式くらいタクシーでも行けるだろう。
すると、足が悪くて行けないと言う。
「家内も仕事だ」と言うと、「葬式の日の朝仕事に行く前に、家に訪問してお金を渡してくれば良い」と言った。
「そのくらいならば、婆さんでも出来るだろう」と言うと、「足が痛くて座れない」と言ってきた。
「お焼香でも」と言われたら困る、と言ってきた。
両膝が人工関節となっているので、不都合らしい。
なんだかんだ屁理屈をつけては断ってくる。
昔からこんな調子だから、私はまたか、と思うだけだが。
そのくせ「行きたくない」とは絶対に言わない。
本心は行きたくないのだが、他の理由で行けないことをアピールする。
結局、家内が仕事を休んで行くことになった。