昔々、確か1972年ごろ、日産サニー1200でGX5という車が発売されました。元々700kg前半の軽量車重にOHVでもよく回るA12エンジンに高速域で本領発揮のSUツインキャブ、シンプルなサスペンション構造と相まって国内レースでも各カテゴリーで長きに渡って常勝車両でした。追って発売されたこのGX5の5速手動変速は、1速が左手前で2~5速がH型で操作するレーシングパターンで、さらに素晴らしいのが5速ギア比がオーバートップではなく1.000の“直結5速”で2~4速がクロスレシオでした。もうこのカタログスペックだけで食指を動かされました。

他にもスカイラインやフェアレディZ、ブルーバード510など走り屋やクルマ好きが気になるクルマを多く生み出してきました。下の写真は70年代前半の本牧埠頭あたりでしょうか、ダットサンと記された専用輸出船。手前の車が上述のサニー、向こうには北米で大人気だったフェアレディZや510が乗船待ちしています。このころはまだトヨタと国内シェア争いをしていて技術の日産、販売のトヨタなんて言葉をよく耳にしました。

「世界の恋人」というタイトルの日産の曲もありました。ロイジェームスという日本語の達者なアメリカ人が新車発表会やCMでクルマの紹介をしていました。今となっては懐かしくもあり、悲しくもありです。

さて、先日の破談劇。時価総額や製品構成などあらゆる面から今やホンダに頭を下げてよろしくお願いしますと言っても全く不思議でない状況ですが、今だに長年にわたって築き上げられたプライドだけはお高いようです。
将来の技術や製品開発をせず強引なコストカットで一時的に収益を上げいっぱいお金をもらって楽器ケースでレバノンにトンズラした奴のせいだけでなく川又・石原・・・と長い歴史の中で築き上げられた官僚体質の「成果」のようです。同じ長い歴史の中で、一時は落ち込んでも創業者らが築いた精神を失わず蘇ったソニーとはちょっと違うようです。
今回の破談は、おそらく縁談の仕掛けにかかわったはずの政府が説得しなくてはいけません。「おいおいお前らガタガタの病人状態でホンダの子会社になって救ってもらうしかないし日本の自動車産業の将来にもそうすべきだ」と。
昭和前半から何かにつけて自動車産業に口を出してきた政府は今こそ強く誘導すべきです。
ルノー絡みの相当数の株式を含め仮にホンハイに買われたとしてもホンハイにいいとこ取りされて消えるでしょう。シャープより悲しい末路かもしれません。なぜならホンハイが日産から得るものはあっても日産に与えるものは金という名の処方薬だけです。今更ホンハイと日産で世界市場で勝てるクルマを送り出せるほど呑気な市場ではありません。何より技術面でホンダの方がいいに決まっています。マクロ的に日本の自動車産業にとっても本田・日産・三菱の総合力でトヨタに続くグループを維持できるのです。
それでもプライドが邪魔をするのでしょうか「元・世界の日産」の役員さんは・・・・
役員のプライドの陰で可哀想なのは社員と多くの長く日産を支えてきた部品メーカーです。
この破談が覆ることを祈ります。