生兵法 〜ホントに危険です〜⑤ | ~資地計築~ 建築デザイン 木下 稔

生兵法 〜ホントに危険です〜⑤

つづきです。

①のお客様の所へ伺うと、初めから奥さんが涙ぐんでおられました。

花粉症なのかな?

と思ってたのですが、話の最後の方ですすり泣きに変わったのでやっぱりそうだったようです。

お客様に話を伺っていると自分の信頼できる設計をやっている人間が

「地盤は大事だから」


ということを言われ

「スゥエーデンサウンディング式という地盤調査の方法ってどう?」と聞いたところ

「う、ううん、えーと、あの、地質調査ぐらいやっとかないといかんよ!地盤は大事だから!」

その意見を聞き入れ、自分で調査会社に依頼し、地質調査したそうです。

「地質調査」と聞いてもピンとこないでしょうが、

金額で言うとスゥエーデンサウンディング式が大体、3~5万円ぐらい

しかしながら地質調査とは重機を持って来て地下30mぐらいまでボーリングで穴を掘る工事で

25万円から40万円ぐらいする調査です。

住宅の場合総重量から割り出すとここまでの調査は必要なく

「ビルでも建てるんですか!」

皆から聞かれたそうです。

知り合いの設計屋さん、実は店舗とかしかしたことがなく、建築工事の事があまり分からなかったそうです。

このように自分の思い込みでどんどんお金が出て行き、どんどん都合が悪くなっていってます。

①②③のケースのように

「自分の思い込み」が正しいと思い、行動される方が最近増えています。

恐ろしいことです。

何故なら、建築には建築基準法、建築士法、建築業法、

不動産には宅地建物取引業法、

全般的に民法があり、すべて法律の基に計画、判断される必要があるからです。


その為に有資格者がいるにも関わらず無資格でかつ「聞きかじり」を繋ぎ合わせた情報では問題が起こらないはずは有りません。

不動産取引についても、地盤調査についても、建築工事の費用構成についても、僕が法に則った上でのお話をしても


「でもね、私が知り合いに聞いたらね~」

と言い返すお客様が非常に可哀想になってきました。


思い通りならなくて苦しんでおられるのですね。

だから藁をもすがる気持ちで見知らぬ僕に電話してきたんですね。

顔の見えない向こうの人に自分から話しかける

そんな切羽詰まった気持ちを考えると到底無理な計画を無下にするのがつらくなりました。


「お客様、今まで辛かったでしょう。何年もかかって夢を実現しようと頑張って来たのに、今では夢ではなく楽しみも何も無い義務になっておられますね。

ご説明させていただいたように、このままでは計画通り進みません。

ただ、今お客様に必要なのは計画を実行できる業者ではなく、夢も希望もなくなった事、自分がやってきたことを許してあげることではないですか。

高く買ってしまった土地かもしれませんが、それでも5年かけてここまで辿り着いた「縁」じゃないですか。

ここから出来ることに夢を持てるよう、今日を許しましょう、明日同じ気持ちになったら、明日も許しましょう」


そう言った後、お客様は憑き物が落ちたようにガックリとなり奥様のすすり泣きが大きくなりました。

夢を詰め込むはずの家がお店が苦痛になっているのですから、精神的負担もかなりであったと思います。

生兵法は怪我のもと、昔の人はよく言ったものです。

ただ、不動産、建築の場合は金額が大きい為、失敗したときのダメージが大きいので本当に危険です。

結局、このお客様はうち以外に数件の業者と合う約束をされており、

計画を変えて進めようと思われるなら御連絡くださいと言い残し帰ってきました。

その後連絡はありません。



僕に言える事

プロに相談しましょう。