ついに、東京オリンピックの公式エンブレムが異例の使用中止となった。


アートディレクター佐野研二郎氏の盗用疑惑に始まり、結局、大会委員会側としても事態の収拾が付かなくなったうえでの判断であろう。


佐野氏は、事務所のホームページの中で、模倣や盗作は断じてしていないと改めて断言しているようだが、他の仕事が盗用や自分のデザインでないものを使用してしまっているから、疑われても仕方がない。


このエンブレムのデザインは間違いなくオリジナルだと叫ぶことで、過去に彼が生み出した他のデザインはオリジナルではないと言っているようなものだからだ。


結局、一つひとつの仕事をきちんと真摯に取り組んでこなかったから、このような事態になるのであって、残念ながら、信用の失墜は決定的であろう。


デザイナーは、生みの苦しみを仕事上で味わう事は、本来、覚悟しているはずだ。


何もアイディアがでてこない苦悩、納期が迫ってくる恐怖、生まれたアイディアに対する落胆・・・。


己の魂を削り、オリジナルな作品を結晶化させるには、ある意味、神の領域に足を踏み入れなければならない。


デザイナーに限らず、クリエイターたちは、日夜、闘っている。


その闘いの中から、朝日が昇るように、眩い光を放つ作品に一番最初に出合う権利を与えられる。


決して安易な手法、テクニック、効率化などの文言とは無縁の次元であろう。



佐野氏は自分自身と闘うのがつらかったのかもしれない。


彼は、結局、クリエイターではなかった。


信用を取り戻すには、改めて、クリエイターに戻って、自分と向き合うしかないのだ。