暑い盛りのこの時期、どうしても聴きたくなる歌がある。
はっぴいえんど 「夏なんです」
作詞 松本隆、作曲 細野晴臣
元々、細野晴臣の音楽にはまってた20代の頃、ふと立ち寄ったレコードレンタル店(古い!)で見つけたLPの中の歌だ。
当時はバブル前夜。
世の中はこれからやってくる大きな波を迎えようと静かに準備をしていた時期である。
街は再開発ラッシュが始まり、景色はあっという間に変わる。
六本木、麻布、広尾、恵比寿、渋谷・・・
人々も70年代の暗さから、明るく派手できらびやかなものに目が移り、音楽も新しさが求められた。
そんな中、、70年代の香りが閉じ込められたこの歌に出会った当初、正直、時代遅れな印象を持った。
まるで夏の午後、細野晴臣が唐突にアパートに現れ、ビール片手にさらっと歌を歌っているような感じ。
だが、妙に生々しい。
やけに耳に残る。
そしてはっきりと映像が目に浮かぶのだ。
夏の入道雲を切り取り、蝉の声を響かせ、通り雨の向こうに映る石畳の光景。
一瞬の景色を心の中に焼き付ける印象的な言葉、並大抵の努力では到底辿り着くはずもない圧倒的なセンス。
ある意味、職人技ともいえる松本隆の紡ぐ歌詞は、松田聖子をはじめ、一流の歌手たちにより映像化される。
そして歌を聴くという行為が、心で映像を見る行為となり、ただ暑いだけの夏を、深く味わう術となる。
明日は、久しぶりの休み。
夏の風物詩を味わうとしようか。