たまには何にもしない日があっても良いと思う。

私にとって何もしない日とは、仕事を極力控える日を意味する。

洗濯したり、洗い物したり、ベランダに出て外の景色を眺めたりしながらすごす日は、

私にとって何もしない日なのだ。



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ほのかな香り。

不規則な風の流れに揺れる真っ青なジーパンや白いシャツを見ていると、

その果てしなく続く演舞が私の意識をさらっていって、行ったことのない

どこかに連れていってくれそうな気がする。

おそらくそれは、夢うつつとか、こたつの中、とか、そういったものが

人に与える肌ざわりのやさしい世界である。

そう、私はやはりそこに行ったことがあるのだ。


行ったことのない世界を想像することは、こんなにも難しい。

想像力がもっと豊かだったら、よかったのに。

と小さいころから何度考えたことだろう。


傘がつっつとベランダの上を滑った。ぎこちなく、けれども

ベランダの上をどのように通るのが一番うまくいくか、ずっと前から知っていたかのように。


私はそうした世界を目に焼き付ける。

今度こそは、この記憶をこころにとどめておこうと。


けれどもそういう下心と一緒に創られた記憶は

たいてい2,3年後私の記憶に残ることはないのだった。


いまごろ大学は入試をしている。

数年前の今頃、私は同じく試験を受けていたのだろう。

頭を抱えたり、これから先のことに胸を躍らせていたのだろう。


外に咲くキンモクセイの香りが、どこからか入ってくる。

私はこれからどのようになっていくのだろう。

みんな不安はあるのだろうか。

みんなこうやって過去を思い出すのだろうか。

キンモクセイの香りは、いつだって

誰かさんの面影を乗せてやってくる。


よう、また来たよ。

あっちに行って頂戴。




だいじょうぶ。



私はその魔法のような言葉を何度も繰り返し、

窓からたくさんの無垢の風を迎えた。