悲しくなってくると、言葉を書きたくなる。

もうどうでもいいと思っていたのに、

まだどうでもいいと思っていなかったことに気づく。

そして私は過去に甘えていたことに気づく。

今の苦しさを過去の蜜を思い出すことで一時的に忘れようとしていたことに気づく。

嬉しいことがあったときより、

悲しくて喉がジワジワと痛くなって言葉を失ったときのほうが、

言葉を綴りたくなる。

メガネという名の世界は濡れ、もはや何も見えないが、

それでもいいから、記号を押し続け泣けなければ、

自分がどこかに行ってしまいそうで、

忘却されてしまいそうで、

怖くなるので

カチャカチャと

押し続けるしかないのです。

記号のついた、

この世界の断片ひとつひとつを。

その紡ぎ手の頬は、濡れています。

その紡ぎ手は自分の愚かさに泣いています。

調子に乗ったのは、あなたなのだから、

しょうがないでしょうと思いつつ、

自業自得と思いつつ、

私はこの静かな夜の向こう側の世界の余白に

音も色彩もない声を必死にしみこませようとするのです。



おろかだね、

笑っちゃうね。



私の声は水の中で発せられた声のように

消えていくのです


水面上に戻るには、

ど う し た ら よ い の で し ょ う 。


つまるところ、

私は、

水中でんぐりかえりの

苦手な女なのです。