(ジョングク×ジミン)です
ジミンさんに出会った日から、高校で授業を受けている時も、テコンドー部の練習中でさえも、ジミンさんのことを思い出す以外、何も手につかなくなった。授業が終わってテコンドー部に行っても、ぼんやりしていて部長のチス先輩に注意を受けた。
会いたい…
ジミンさんのお店の場所はネットで調べるとすぐに分かった。だけど、出会ってすぐお店に押しかけて、ジミンさんに引かれたりするのは嫌だったので、僕は数日我慢した。授業が早めに終わり、部活が始まるまで余裕のあった日、僕はいそいそとジミンさんのお店に出かけた。
お店はパン屋や花屋など昔ながらの小さな店屋が並ぶ一角にあった。隣近所と同じく小さな店で、ガラスのドアから店内がわずかに見えた。
いる…
ジミンさんがお餅のショーケースの前に立って、何か帳簿みたいなものをめくっているのが見えてドキドキした。僕は悪いことしているみたいに、通りを歩く人達が少なくなったところを見計らって、深呼吸してからドアに手をかけた。
「いらっしゃいま……あ」
一瞬驚いた顔をしたジミンさんが、すぐににこっ、と笑ってくれて僕は嬉しくなった。
「来てくれたんだ、ジョングク」
ジミンさんが僕を呼ぶ声を聞くと、どきん、と胸が跳ねる。
名前、覚えててくれたんだ…
頰が緩みそうになるのをこらえて、精一杯大人っぽく見えるように微笑んだ。
「こんにちは、ジミンさん。もう少し早く来れたらよかったんですが、部活が忙しくて…」
…って、何言ってんだろ、僕…
ずっと、ずっとこの人のこと考えてたくせに…
「ううん、来てくれて嬉しい。この前はありがとう」
途端ににこっ、と目を細めて笑うジミンさんにホッとすると同時にドキドキする。
エプロン姿も可愛い…
白いシャツに黒いエプロンというシンプルな格好はジミンさんによく似合っていた。僕はドキドキするのを隠したくて、一度店内をゆっくり見回した。
「ここ、すぐわかった?」
「はい」
「よかった。…今日はどちらにしましょう」
ジミンさんはいたずらめいた顔つきになって、ガラスケースのお餅を手のひらで示してから、僕を見て微笑んだ。
「あ…えっと」
様々なお餅を目で一通り追う。僕の視線は、見覚えのあるお餅の前で止まった。
「これ…美味しかったです」
「へへ…もう、そんなこと言って、またもらおうと思ってるな?」
ジミンさんは嬉しそうに笑った後、腰までの高さのガラスケース越しに僕の肩を軽く押す。どきん、と胸が鳴って、自分が重症なのを思い知った。
女子に触れられても…
なんとも思わないのに…
「違います、今日はちゃんと買います!」
僕が言うと、ジミンさんはくすくす笑った。