(ジョングク×ジミン)です
ジミンさんはそんな僕を見てから、一瞬、腕時計にちら、と目を走らせた。
「あ、時間なかったら…」
「ううん、一緒に食べよっか」
ジミンさんが笑ってベンチへ腰掛けたのを見て、僕はすごく嬉しくなった。テコンドー部の朝練の時間が頭をよぎったけれど、この後予定していたジョギングコースを短縮すれば間に合いそうだった。僕はジミンさんの隣に腰掛けて、彼から渡されたお餅を一つ差し出した。
「ふふ…自分の作ったお餅を誰かと食べるのって」
「嫌ですか?」
「ううん、ちょっとだけ緊張する」
そう呟くと、ジミンさんは僕が手に持った餅をじっと見つめた。
そんな見られてたら、食べにくいけど…
ドキドキしながら、餅を口元に運ぶ。かぶりつくと途端に柔らかくぷにぷにした食感が口の中に広がった。
あ…
「美味しいです、すごく…」
僕が呟くと、ジミンさんは目を細めた。
「ありがとう」
「これ、ジミンさんが作ったんですか?」
もう一口、かじってから聞くと、ジミンさんは照れくさそうに笑う。
「うん…僕お餅屋さんやってるんだ」
「お餅屋さん…すごいです」
「すごくないよ」
「ううん!こんなの作れるなんて…」
僕は最後の一口を口に入れた。まだほんのりと温かさの残る、ほのかな甘さの餅を味わって食べる。
「ほんとに、美味しいです…」
「へへ…なんかすごく照れる…」
ジミンさんは両手で口元を覆って身をよじった。
やば、可愛い…
年上なのにこんな…
僕はテコンドー部の先輩の面々を思い出してみた。僕の周りには年上でこんな可愛らしい人はいない。ジミンさんは持っていた餅を僕に差し出した。
「こっちも食べて…僕、自分が作ってるときに試食で食べてるんだ」
僕は礼を言って餅を受け取った。
「お餅屋さん、どこでやってるんですか?」
「えっとね…ー町の…」
ジミンさんが言った住所は僕の高校の近くだった。
「あ、じゃあ、あの定食屋さんわかりますか?オムニ食堂っていう」
僕が店の名前を言うと、ジミンさんの顔が明るくなった。
「うん、わかるよ。近くに住んでるのか?」
「いえ…通ってる高校が近くにあります」
「そっか、ジョングク、高校生なんだ」
「はい。テコンドー部で…いつもこの辺ジョギングしてて」
「へぇ、テコンドー部かぁ、かっこいいなあ!」
ジミンさんが付けてくれた感嘆符が見えるみたいで僕はドキドキした。
かっこいいのは、テコンドー部で…僕じゃないんだぞ…
にやけそうになる顔を、ぐっと引き締める。