Side JM
僕はなんてバカなんだろう。
ナムジュニヒョンにキスされるまで、ジョングクを忘れることなどできないとわからないなんて。
抱き寄せられて、頰に口づけされて、ぼんやりとしてしまったのがなぜか、今はわかる。僕の中に蓄積されたジョングクとの思い出。封印しようとしていたそれが、一気に頭の中に広がったからだ。ナムジュニヒョンの大きな体、落ち着いた大人の優しい香り、それでいて危なっかしい瞳。その全てがジョングクと違って、すごく苦しくなった。ナムジュニヒョンの「好き」に、今の僕はきっと、応えられない…
「ナムジュニヒョン…」
唇を離して、何と言っていいかわからず、ぎゅ、とナムジュニヒョンの腕を掴む。ナムジュニヒョンは、にこ、と笑った。
「突然、ごめんな。泊まんの、やめよっか…」
「え…」
ナムジュニヒョンは僕から体を離して、ソファに体を埋めた。
「やっぱり今はまだ…お前の心が、弱ってる気がして…他の人に、向き合えないだろ」
「え……ぁ…」
ナムジュニヒョンは僕の頰に手で触れた。愛おしげに見つめられて、胸が震える。
「俺も…何もしない自信ないし」
そう言うとナムジュニヒョンは自嘲めいた笑みを浮かべて、素早く僕の頰にキスをした。
何もしない自信…
僕は今更ながらナムジュニヒョンの想いの深さを感じて、胸が痛くなった。
ナムジュニヒョンがこんな風に僕のこと…
でも、僕…
頭に浮かぶのが、ジョングクのことばかりで僕はうろたえた。ナムジュニヒョンと泊まったら怒るだろうな、とか、キスしたことは絶対黙っておこう、とか、そんなことばかり考えてしまう。
バカみたい…
もう、
別れたのに…
ぽろりとこぼれた涙を、顔をしかめてくしゃくしゃに笑うナムジュニヒョンがそっと拭ってくれた。不器用な彼の、大切なものを扱うような手つきにまた涙が溢れてくる。
涙が止まらない…
どうしよう、僕、ジョングクが好き…
こんなにジョングクのことが好きなんだ…
