バーのBGMが軽やかな曲に変わって俺は足で小さくリズムを取った。ジョングクにメッセージを送ってしまってからは、なんとなく心のつかえが取れた気がして気が楽になった。
「俺も、ジミンが飲んでたさっきのピンクのカクテル飲もうかな」
「似合わないですよ」
「ふふっ…別にいいだろ」
くくっと笑うジミンを横目で見ながら、オーダーを済ませる。すぐに美しい色のカクテルが俺の前に置かれた。
「僕がステアしてあげます」
ジミンはにこ、と笑ってステア用のスプーンを手に取った。
「ナムジュニヒョンだと、グラスが壊れるかもしれないから」
「それくらいできるよ」
「いいえ、ダメです」
俺を見ていたずらっぽく微笑むジミンの唇に見とれる。
何もしないつもりだったけど…
俺、大丈夫かな…
ジミンは機嫌よさそうに、俺のカクテルを念入りにステアして、にこにこ笑って差し出した。
「はい、僕が混ぜたからすごく美味しくなりました」
ジミンが少し首を傾げたから、首元のネックレスがジミンの白い肌をころん、と滑る。慌てて視線をそらせた。
「ありがとう…」
一口飲むと、ジミンはまた面白そうに笑い出した。
「やっぱり似合わない…」
ジミンは顔を手で覆って下を向き、体を小刻みに揺らして笑った。ジミンの笑い方は時折俺を困惑させる。全力で笑っている感じが、可愛すぎるのだ。
「お前な…」
と言いながら、俺はジミンの二の腕を軽く押した。ジミンはひとしきり笑った後、顔を上げた。
「ナムジュニヒョンには、僕が贈ったカーディガンが似合ってます」
ジミンは得意そうに言った後、照れたように笑った。
「ありがと…ジミンのくれるものはいつも嬉しいよ」
俺は心の底からそう言った。ジミンの誕生日プレゼントが「外れた」ことはない。俺はジミンに何かもらうたびに、驚くばかりだった。「なんで俺より俺の欲しいものがわかるんだろう」と、いつも思った。
「ふふ…この前のは、店で見かけてナムジュニヒョンのことがすぐ浮かんで…気づいたらお会計してました」
いたずらっぽく笑うジミンにドキドキする。俺のことを考えているジミンがその日、その場所にいたと思うと体が熱くなった。
こんなこと言われたら、俺…
何もしない自信が、どんどん…
「ん…ありがとな…」
口に出すと同時に、自然とジミンを抱き寄せていた。照明のせいか、目を細めて俺を見つめるジミンにどきりと胸が跳ねた。俺は素早く顔をジミンに近づけて、頰に軽く口付けた。逃げないジミンの頰は、見た目通りすべすべしている。
ジミンの香り…
すごく甘い…
「ナムジュニヒョ…」
ジミンが驚いた顔で俺を見たけれど、俺を止める効果はなかった。ジミンの細い顎を指で引き寄せて、ちゅ、と口づけする。
「ぁ…」
ジミンの唇から溢れるかすかな吐息が、何を意味するのかはわからない。ジミンの潤んだように見える瞳には、俺と、俺の背後の照明がぼんやりと映る。
「魅入られる」って英語でなんだっけ…
…I’ve got charmed by you.
思い出して頭の中でセンテンスを紡いだときには、ジミンの柔らかな唇を塞いでいた。
