(怖い…でも、頑張って…)
ジミンは廃校の朽ちた扉に手をかけた。
(男になって、気持ちを伝えなきゃ…)
ジミンは移動車の中で繋いだジョングクの手の温もりを思い出していた。
その頃ジョングクは、別の入り口から中へ入ると、校長室のそばの物陰に隠れていた。校長室にお化け役の男がいるのに気づき、足を止めたのだ。
(あの人、どこかで見たような…)
ジミンの様子を窺ってか、たまに校長室から姿を見せてあたりを窺う男の顔を、ジョングクは記憶の中からたぐり寄せた。
(そっか、あの人…ジミニヒョンのこと大好きなテレビ局のスタッフさんだ)
カムバックのたびに出演する音楽番組の撮影で、やけにジミンにベタベタするスタッフがいたことをジョングクは苦々しく思い出した。撮影にかこつけ、ジミンの衣装を直すふりをしながらその肌に触れたり、カットの説明をしながらジミンに密着したりしていた。他の5人は気に留めていなかったようだが、ジョングクにはわかった。自分もそんな風にしたい、といつも思っているからだ。
(あの人が驚かせる時に、ジミニヒョンに触ったりしたら…)
自分はどうするんだろう。ヒョン達がジミニヒョンに触れるのすら見たくない時があるのに…って、僕ひどい奴だな。
「あ、校長室…これかな」
ジョングクが自己嫌悪に陥っている間に、ジミンは校長室の前にやって来ていた。恐る恐る部屋の中を覗き込みながらゆっくり入っていくジミンの背中から、数メートルのところにグクは待機する。
「あーもう、怖いなあ〜、あ、これ…」
ジミンは絵を見つけたようで、カタッと絵を外した音がした瞬間、「わあぁぁぁあっ」とジミンの叫び声がした。
「わっ…や、ちょ、ゃ、変なとこやめっ…わあぁあっ」
叫び声がところどころくぐもった声になるのを聞いた途端、ジョングクは物陰から飛び出していた。