「や、あの…無いよりマシかと…」
何言ってんだ、僕。なんでこんな風にしか言えないんだろう。ジョングクは頭を抱えたくなったが、ジミンは「ふふ」と照れくさそうに笑った。自分の拳に、ジミンの小さな手がふわりと被せられて、その柔らかな温かさに、ジョングクは思わず拳の力を緩めた。きゅ、と絡んでくるジミンの指の感触に、ジョングクの胸はどくんと鳴った。
(だめだ…こんなつなぎ方…恋人みたいで…)
「…ジョングガも、ヒョンを安心させるやり方をやっと分かってくれたんだね」
おどけて言うジミンだったが、繋がった手はますますぎゅっ、と握られてジョングクはドキドキした。肝試しに付いていってジミンのそばにいて、動揺しない、男らしいところ、頼れるところを見せたいのに…もうすでに胸の中が、激しい嵐だなんて…
ジミンはジョングクと手を繋いだまま、あたりさわりのない話をしていたが、肝試しスポットである廃校に近づくと、だんだんと言葉少なくなった。
「あの…ジミニヒョン…」
僕、一緒に行きますよ、と言いかけたとき、ジミンがこちらを向いた。
「お前に付いて来てもらったのは失敗だったかも」
その瞬間、ドキドキしていた気持ちがさぁっと温度を失って、ジョングクはうつむいた。
(やっぱり、勝手について来て、怒ったかな、ジミニヒョン…)
恐る恐る顔を上げると、ジミンは照れくさそうに笑っていた。
「違うって。お前と離れたくなくなるから、やばいってこと」
そう言うと、絡ませた指で、とん、と自分の手の甲を軽く叩くジミンに、抱きつきたくなる衝動をジョングクは堪えた。
「ジミ…」
「でも…頑張って行ってくるよ。これ頑張れたら、お前にちゃんと…告白できる気がする」
どういうこと?
告白?ジミニヒョンが僕に?
「頑張れたら告白する」って、もうすでに告白してない?
あれ?告白って…僕がしたかったことじゃない?
茫然としている間に、車は廃校の近くの駐車スポットに着き、ジョングクがジミンの言葉を反芻しているうちに、ジミンはジョングクの手をするりと解くと「行ってくる」と言い残して車を降りていった。
もう辺りは暗く、肝試しにはおあつらえ向きの時間帯だ。暗闇の中で、タンクトップを着ているジミンの白い肩が目に焼き付いた。
(僕が好きって言いたかったのに…)
大人って…ヒョンって、ずるい。
だけど…
子供は子供の、
トンセンはトンセンのやり方でやってやる。
ジョングクはスタッフの目を盗み、こっそりと車を抜け出すとジミンの後を追った。
ジョングクはスタッフの目を盗み、こっそりと車を抜け出すとジミンの後を追った。