希少がんセンターの予約がとれ、早速セカンドオピニオンの予定を入れた後の土日で、

夫の体調はさらに悪化していった。

 

当初は病院内を自力で散歩していた夫は、とうとう自力歩行が困難になってしまった。

また、腫瘍ができてから背中の痛みで夜が寝づらかったようだが、ほとんど睡眠もとれない状況になっていた。

 

症状緩和のためのステロイドの点滴で顔はむくみ、

入院開始時とは別人のように弱っていた。

 

この頃、夫の癌について周囲に報告した時、多くの人に「若いから進行がはやいでしょう?」というコメントをもらっていた。

夫の場合は、その進行のはやさが分かりやすく体調に出ていた。

 

一般的に、抗がん剤が効きやすい腫瘍であるという話があった。

大学病院の先生や看護師さんはいつも丁寧で、こちらの意見もしっかり聞こうとしてくれる。

このままここで1日も早く治療をした方がいいのではないか…と私は考えるようになってきた。

 

 

一方、夫は国立がんセンターへの転院を視野に入れていたようだった。

「俺の症状は希少だから、センターの方でも、症例として診る事でデータとなるはず。

 希望すれば転院の調整もしてもらえるんじゃないか」

と。

しかし、転院とはすぐにできるものなのだろうか?

治療が長引いてしまっても大丈夫なのだろうか。

 

セカンドオピニオンの際は、現在、大学病院から提示されている治療法について質問をして、

もしこのまま治療を受けてもいいんじゃないかという事であればすぐに治療を開始する…という事で結論を出した。

 

がんセンターは高層階に食堂があるようで、セカンドオピニオンの後はそこでご飯を食べよう。

病院は築地にあるので、魚のメニュー等もあるのかな?

なんて、少し楽しみな予定も入れた。

 

 

1月16日月曜日の朝。

午前中に予約を取っていたため、私はいつもより早く、9時頃に夫を迎えに病院へ向かう。

 

なお、セカンドオピニオンの予約については金曜の終業後に知ったため職場との調整ができず、

この日は病院に移動してから仕事を休みたいという連絡をさせてもらう事になった。

夫の看病ができたのは、私の職場の気遣いがあってこそだと本当に感謝している。

 

自力歩行が困難な夫のために車椅子を借り、

先生が揃えてくれたセカンドオピニオンに必要な書類をもって病室を出発。

夫は話をするのも息が切れてやっとの様子だった。

 

正面玄関で車椅子を返し、病院前に待機していたタクシーまで何とか歩行補助し、

「国立がんセンター 中央病院」までの移動を頼む。

 

私たちが安心できるような情報を仕入れられるだろうか…この先の治療はどうなるのか…。

車移動中、高速道路の殺風景なフェンスを眺めながら考える。

 

やっと病名が分かってこれから治療ができる、がんセンターで話まで聞いてもらえる、

体調の悪い夫に代わって私がしっかりしなければと気合を入れる。

 

 

1万円を超える運賃を出して、車は病院に到着した。

夫を入り口近くに座らせ、移動のためまた車椅子を借りる。

警備員さんが協力してくれた。

 

 

がんセンターは高層ビルのようで、今まで自分が行ったことがある病院とはイメージが違っていた。

ロビーは吹き抜けのようになっていて開放的だった。

既に院内には多くの人が出入りしていた。

 

 

セカンドオピニオンは、希少がんセンター内で行えるようだった。

受付で場所を確認し、希少がんセンターの待合室のような場所へ行く。

 

事前に渡された問診票へ、車椅子の夫に代わって記入を行う。

この時の問診票記載内容について、写真で記録がとってあった。

 

◆現在の病状

 

病名:胚細胞腫瘍 縦郭原発 性腺外 非セミノーマ の可能性が高い

 

◆病状や今後予想される経過

息苦しさや咳が日々苦しくなり、通常歩行や会話が困難な状態へ。

縦郭に右肺をほぼ押しつぶしてしまうような形で腫瘍あり。

 

1/12の時点で10x13x20cm以上(ほぼ肺を押しつぶすサイズ)

 

初診時よりCTにより明らかに早いスピードでの腫瘍の成長を確認

心拍が頻脈になってきている

 

◆現在提案されている治療法

 

化学療法は非セミノーマを想定し4クール

VIP or BEP療法

 

国立がん研究センターにてセミノーマ、非セミノーマの確定等検査は続ける

 

化学療法での様子を見ながら、腫瘍が縮小した場合は手術を予定

 

◆確認希望事項

 

右肺を押しつぶしている状態での抗がん剤投与が、副作用面でBEP、VIOPどちらが適しているか意見伺えると嬉しいです

 

現在かかっている病院の呼吸器内科、腫瘍内科の先生方より症例が非常に少なく、ほぼ見た事がない症例だと伺った

治療したことがない腫瘍への抗がん剤の投与は、コントロールの面などで症例の少なさがネックになってしまう可能性があると聞き、

症例数が多いというこちらへセカンドオピニオンをお願いした。

 

予約時間を少し過ぎた後、希少がんセンター内の診察室から名前を呼ばれた。