「100年ごはん」という大林千茱萸(ちぐみ)さんが、初監督を務めたドキュメンタリー映画の上映会に行ってきました。

「Coop Cook Book」という料理本専門店とサロンスペースが併設されたおしゃれな場所で、知人の干し野菜研究家・廣田ゆきちゃんが干し野菜ランチとトークセッション付きの上映会を開催してくれました。

場内には、有機農業や自然栽培、持続可能な未来に思いを馳せる人々で一杯になりました。

さて、映画の最も中心となる臼杵市の取り組みとは、

市長が先頭に立って、循環型農業を目指し、草木主体の完熟堆肥の生産を実現する土作りセンターを建て、土作りからはじめる安全で新鮮で美味しい農産物を作ろうと市が一体となってスタートした事業です。

行政でこのような先駆的な取り組みをしたのは、ここ臼杵市が初めてだとか。

このセンターで作られる堆肥は、8割強が、伐採くずや枯れ葉、2割弱が食歴のはっきりした養豚の糞尿で作られたもので、「夢堆肥」という名前がつけられています。

これらを農家さんに使用してもらい、化学肥料を使わずに栽培した農産物を臼杵市が認証し、ほんまもんシールを貼って、住民たちにも理解を広げ、支援していこうとしているのです。

さらに完全無農薬の有機栽培作物には、さらにグレードアップした金色のほんまもんシールが貼られます。

完全無農薬・有機栽培を市をあげて支援する。

100年先の住民たちが、この町に住めたことを誇りに思えるような町づくりをしようという未来志向の政策です。

自分たちのことばかり考えたエゴな政策がまかり通る時代に、今、地方自治はとても魅力的です!

東京都の1000万人の胃袋を満たすため、首都圏の近郊農家さんは、大規模農業からなかなか離れられません。

でも、地方都市、それも小さな町の農業で、地産地消を目指せば、自然を壊さない循環型農業ができる。そんな豊かな可能性が花開き始めているようです。

今日のトークセッションで、監督の大林さんが、「戦後何も食べ物のない時代から60年以上かけて、これほど豊かな国になった。しかしその国が世界で一番、食廃棄物の多い国になってしまったことは、どこかで行き過ぎた社会を作ってしまったのでは。私たち大人がもう半回転させて、ちょっと前の暮らしを取り戻すことが大切なんじゃないかと思うんです」と話してくれました。

このドキュメンタリーの撮影には4年間を要しているそうです。

じっくり取り組んできた臼杵市の取り組みが丁寧に描かれています。

ヒーローもカリスマも出てきませんが、市民一人一人が真剣に町づくりに関わっていることが手に取るようにわかります。

大林監督も言いました。

「ドキュメンタリーといえど、ドラマチックな展開やカリスマにスポットを当てて映画を作ることが当たり前になっているけれど、だからこそ、敢えて主役は作らず、出ている人、町の人すべてが主役になるような映画にしたかった」と。

町作りも農業も一人ではできません。

みんなの思いを少しずつ結集して、共生しながら、進歩させていくことが100年後の未来を作る一番の可能性なのではないかと思います。

便利なものを手にしてしまった私たちがすべてを放棄して、江戸時代に戻ることはできません。でもゆるやかに少しずつ、昔の良い暮らしを取り入れていけば、みんなで幸せになることができるのでは?と思うのです。

最近の若い人たちの生き方の流行は、シェアだそうです。

分かち合い、分け合い、助け合い、支えあい。

私たち50代の大人たちがもっとそのことに目を向けなければ行けないような気がしています。