母は「下の人」という言葉をよく使う。
その言葉を、私に向けて使ったことがある。
昔、子どもの頃の家庭環境について、「あのとき、ああいうことが辛かった」と私が話したとき、母は「あんたみたいな下の人にあれこれ言われたくない💢!」と怒鳴った。
私はその時「下の人って、どういう意味?」と聞いた。ただ、その意味が知りたかっただけだった。
すると母は、「私は過去のことをいつまでも言わない💢!」とだけ返してきた。
つまり「過去の辛かったことを話す」ことが、母にとっては私を“下の人”と認定する根拠だったようだ。
母は、人に対して――年齢や会社での役職といった客観的な上下ではなく、その人自身の存在を――「上」「下」と勝手にジャッジしているのだろうか。
そして、いつも「この人は上、この人は下」と心の中で分類しているのだろうか。
もしそうだとしたら、母自身は、その中で自分をどの位置に置いているのか――それも、少し気になるところではある。
首藤はるか