母は私に向かって、「あんたは子どもも産んでないくせに」と言った。(兄に日常的に殴られていたことについて「子供のよくある喧嘩!」と言われたので、兄の行為はれっきとした暴力だ、と言ったら「あんたは子どもも産んだことないくせに偉そうに言うな!」という文脈で言われた


だが私は、「子どもを産まない」という選択をしている。


理由はいくつかある。

私がてんかんを発症した原因は、外傷、低酸素脳症など様々な要因があるが、胎生期の海馬の回旋異常や遺伝的要素も大きい。

また、一部の抗てんかん薬は胎児に深刻な影響を及ぼす可能性がある。たとえば、神経管閉鎖障害(二分脊椎など)、心臓や骨格の奇形を引き起こすリスクがある。

また、抗てんかん薬の中には胎児の遺伝子発現を変化させ、正常な細胞分化や発達を妨げる可能性のあるものもある(服用していない妊婦と比較すると奇形頻度は2〜3倍)


さらに、妊娠中のてんかん発作は胎児の低酸素状態を引き起こし、命に関わる可能性もある。


しかもそれは身体的な奇形だけにとどまらず、神経発達への長期的な影響も示唆されている。


妊娠中の発作や薬の影響、産後の経過、遺伝の問題

これらの複雑で深刻なリスクを総合的に考えたとき、私は「子どもを持たない」という決断に至った。


そんな重大なリスクを背負わせてまで子どもを生むことは、私にはとてもできない。

生まれてきた瞬間から「地獄のような人生」を強いることになるかもしれない。

子どものことを本当に考えたら、そんな選択はできない。


それに加えて、私にはもう一つ、決定的な理由がある。

私は、家庭という場において安全を知らずに育った。

そこには、頭を水に沈められたり、頭を殴る・蹴る、家具を頭を叩きつけるといった暴力を数十分にわたって執拗に繰り返す暴力魔がいた。

そんな環境で育ち、心と体に深い傷を負ってきた私は「家庭」というものに対して、恐怖や不信感を強く持っている。


そんな不安を抱えながら、命を育てることなど、私にはできない。

子どもは絶対に責任を持って守るべき存在だからだ。

私は、悩み、調べ、何度も自分と向き合ったうえで「産まない」という選択をした。


それなのに、その思考や覚悟を理解せず、「子どもも育てたことがないくせに」と切り捨てるような母の言葉は、私にとってとても残酷だった。


首藤はるか