母へ | 側頭葉てんかんと私の人生
親戚から聞いたよ。
母さん、今は登山やゴルフ、ボウリングとかの趣味を楽しんで、元気に暮らしてるんだってね。
ちゃんとご飯を食べて、好きなことに打ち込めているのなら、それが一番だと思ってる。ほんとうに、そう思ってるよ。
母さんも、いろいろあったよね。
自営業の失敗、借金、私たちを連れての夜逃げ
うまくいかないことばかりで、誰にも助けを求められなくて、きっと、心も身体もすり減っていったんだと思う。
だから、これからはどうか、自分の時間を大事にしてね。
もう、私のことは気にしなくていいよ。
いや、きっともう気にしてないか。
LINEはブロックされているのは知ってたけど、電話も着信拒否されてしまってるのは最近気づいたよ。
「絶縁とかできないのかな」って言われたときは正直、胸が痛かったけど
今思えば、あのときにはもう、母さんの中ではとっくに答えが出てたんだね。
もう、私は、母さんの人生にいない方がいい。
その方が、きっと母さんは気持ちが楽なんだよね。
たとえ実の子であっても、病気や障害を発症したり、厄介な存在だと感じたなら家族というコミュニティから切り離すーーそういうサバサバとした生き方も、ひとつの選択なのかもしれない。
でも、少しだけ寂しいなと思うよ。
電話で喋ったりできないのも、YouTubeで見つけた面白い動画を送ったり出来ないのも、思い出してもらえないのも、声を届けられないのも。
でも私は、どこかで母さんが笑っていてくれたら、それでいいって思う。
たとえその世界に、私がいなくても。
私の存在が、母さんの重荷だったよね。ごめんね。
私がこんなダメ人間になってしまって、本当にごめん。
頑張りきれなくてごめん。
私は、母さんに幸せでいてほしい。
穏やかな気持ちで、好きなことをして、生きていってほしい。
それだけは、ずっと願ってる。
はるかって名前もすごく気に入ってるよ。
大好きだった母さんへ
母さんの娘 はるかより

