ーこれより呼吸法を教える。習得までに一年はかかるだろう。一年かけて正しい呼吸法を身につければ、お前は生涯、丈夫な体を保つ術を習得出来る。呼吸法だけでなく、内気を自由に操る方法を自ら見出す事が出来た時、お前は私の弟子となるだろう。だが、もしそこまでの境地に達することが出来なかったとしても、悔やむことはない。世の中にそれを成し遂げられる素質を持つものは、万に一人もおらぬ。
隊長は俺にそう申した。
俺は、すぐに呼吸法の魅力に嵌り、気を司る運気調息まで会得したのだ。月に二度ほど俺の修練の成果を確かめに訪れていたムン・チフ隊長は、自ら運気調息まで会得した俺を見て満面に喜色を浮かべたのが、昨日の事のようである。
ミンジュンももう12歳である。あの時の俺よりも大きくなった。武術の方は、本当に小さい頃より木刀を持たせ遊ばせていたので、かなりの腕前である。禁軍程度なら負けぬはずだ。それに比べパダは優しく、血を見るのが苦手である為、武術は身を守る程度しか教えてはいない。
イムジャにこう言われたのだ。人には、得手不得手があるでしょ？武術の得意な子、勉強の得意な子、手先の器用さ、不器用さ…その子にあった生き方があるはずよ。男の子だからと、無理矢理に武術を覚えさせる必要はないと思うの。ダメかしら？と。
確かにその通りかもしれぬ。だから、パダに武術を教えることはしておらぬ。しかし、呼吸法は覚えておいて損なことはないため、ハヌルも交え3人に教えるとこにした。
3人の中で、意外にも1番にその力を身につけたのはパダである。この子は心根はとても優しいのだが、芯は素直でとても強いのかもしれぬ。ミンジュンもそのすぐ後には運気調息まで会得した。ハヌルはイムジャに似ておるのか、なかなか心を無にすることが出来ぬようだが、だんだんと出来るようになって来たようだ。
ハヌルは、昔隊長に言われたように、体が丈夫になってくれたらそれだけで良い。呼吸法とともに、身を守るための護身術をイムジャと2人に教える。
パダとミンジュンは、やはり雷攻が使えるようだ。イムジャは、内攻っていでんするのね、と言っておった。いでんとは、親から子へその力が移る事だと教えてくれた。俺はとても嬉しかった。俺の力が子へと受け継がれて行くのだ。男2人には、俺よりも強くなり、愛する者をどんな困難からも守れる人間になって欲しい。俺の夢であり、願いだ。
道場の横にある大きな木に、厚手の板を立てかけて、雷攻を放つ方法を教える。
どちらの手でも出来るよう、まずは手に気を集める所からだ。これもやはりパダは、すぐ習得する。驚くほどの速さで。
ミンジュンも、すぐ後を追う。兄として負けたくないのであろう。
今度は、雷攻の放ち方を見せてやる。
立てかけた板に、右手に気を少し集め、軽く雷攻を放つと板が割れてしまった。ミンジュンが手に気を集め、雷攻を放つ。なかなかのものである。周りに居た迂達赤が拍手をしていた。
パダも手に気を集める所までは出来るのだが、放ち方がちと弱い。この子はこの力を戦いに使いたくはないのであろう。
パダには、それでも良い、いずれ医術にも役立つ時が来よう。それに、母上やハヌル、好きな女子をこの力で守れる時がくるやもしれぬ。もう少し頑張ってみるかと尋ねると、はいと嬉しそうに答える。もう一度放つと、板が真っ二つに割れた。やはりパダにはかなりの力があるようだ。
俺は、こんな2人を見て我知らず涙を流して居たようだ。ご飯が出来たと呼びにきたイムジャが、俺に飛び付ききっすをした。迂達赤が見て居ますがと笑いながら言うと、だってあなたが泣いてるからと。頬を触ると確かに涙が流れて居た。
あなたのお陰で今俺は、持てるはずのなかったであろう子を四人も持ち、俺の雷攻を受け継ぐこの子達を、心躍るような気持ちで教えてやることが出来る。嬉し涙なのですよ、イムジャ。
その言葉は胸に秘め、ありがとうと抱き締める。何が何がとしつこく聞くあなたの口を塞ぐ。がくりと力の入らなくなるイムジャを抱き上げると、頬を染め、もうと言いながら俺の胸を叩くあなたがどこまでも愛おしい。
子供達は見慣れておるから良いが、すっかり迂達赤の存在を忘れておった。
まぁ、今更体面などどうでも良いか。俺の愛妻家ぶりは有名らしいからな。
俺の妻は天女である。
永久に共に…
台風11号が西日本を横断しそうですね。
皆様のお住まいの地域はいかがでしょうか？何事もなく、過ぎ去ってくれることを願いつつ…。
今日も、一日アンニョン
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