ー江華島より続々と知らせが…状況は極めて深刻です。王妃様…
ー今の話は誠であろうか…まさかチェ・ヨンが…
チェ・尚宮よ、チェ・ヨンと一緒にキ・チョルの屋敷に参った部下が典医寺に運ばれておるらしい。今すぐここに連れて参れ。話を聞きたい。
いつも冷静で宮殿内を走るなどもっての他と思っているチェ・尚宮が服の裾をたくし上げ、典医寺まで走った。。。
昔からあの子は頭の切れる子だ。
何かが起きて、慶昌君を連れ出したのだろう。
信じてはおるが、大丈夫なのだろうか…慶昌君に医仙まで連れておると言うのに…
そんなことをあれこれ考えながら、典医寺に走った。
トギにぶつかりそうになる。
ーおっ!?びっくりした!
トギが身振り手振りで何かを話しているが、今は時間がない。
ーわかったわかった。走るのが得意なあの子は気が付いたかい?
トギはテマンの寝ている方を見る。
チェ・尚宮はテマンを起こし、服を着させる。
チャン・ビン先生が静止しようとする。
ーまだ毒も完全に抜け切らぬのに…何をするのです?!
ーしょうがないしょ?今すぐお呼びさ。どう?歩けるかい?平気?
そうは聞いてはみたものの、テマンの襟首を掴んで、引きずってでも連れて行こうとしている。
トギは、怒っていた。
まだ寝てないといけないのに!
一生懸命止めようとした。
ー何言ってるの?
と取り合わないチェ・尚宮。
ー私が着いて行くから心配するな
チャン・ビン先生がトギを安心させるように言った。
雨が本格的に降り出してきた。ウンスは一旦、木の陰で馬を降り、慶昌君に昨日チェ・ヨンに渡された毛皮を巻き付け雨から守った。毛皮は雨をはじいてくれた。
ー慶昌君、大丈夫?疲れてない?
青い顔した慶昌君は、気丈にも大丈夫だと応えた。
ー雨宿り出来そうな所まで急ぎましょう。
ウンスは再び走り出した。
しばらく行くと、小さな小屋があった。
ウンスはホッする。
やっと慶昌君を休ませられる…
あの人 は大丈夫かしら?
本当にここを捜しだしてくれる?馬でだいぶ走ったと言うのに…
ー慶昌君、ここでチェ・ヨンSSIを待ちましょう。
ーはい…
疲れて話す気力もないようだ。
中に入ると寝台らしきものがある。
そこに慶昌君を横たえた。
ウンスは脈を取り、おでこに手を当て熱を見る。熱はなさそうだ。
はぁ~とため息ををつく慶昌君…
ー慶昌君、馬を中に入れてきますね。それと、何か食べる物でもないか、捜して来るのでこれに包まってて下さいね。
慶昌君は目を閉じ頷いた。
あちこち捜してはみたものの、人の気配が全くないので、食べる物などある訳がない。
やー!なんにもないじゃない!
どうしよう…
部屋に戻って、青い自分のバックを見てハッとした。
あっ!バックにまだ飴やらお菓子やら入っていたわ。
喜んでくれるかしら?
私はお腹が空くと目眩もするし、機嫌も悪くなるのでいつもポーチにお菓子を入れていた。突然こちらに連れて来られ忘れていた。
ー慶昌君、これを召し上がれ。
飴とチョコレートを渡した。
ー医仙、これは天の食べ物ですか?
そうです。甘くてとっても美味しいですよ。これは、チェ・ヨンSSIに…
毒など入って居ないので食べてみて。
慶昌君は目を大きく見開いて、チョコレートを食べている。笑った顔が幼くみえ、胸が苦しくなった。
現代なら、まだ中学生くらい。こんな子が一人で…こんな時代、間違ってる。
ー医仙、天の食べ物とはこんなに美味なのですか?
ーウフフ、喜んでもらって良かったわ。もうひとつは、飴といって噛まずに口の中で溶かして下さいね。あと、お水ですけど、飲んで下さいね。
そういって、バックに入って居たペットボトルに水を入れた物を渡した。

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