あの人が居ない今、私がこの子を護らなくてはいけない。
現代ではずっと一人で頑張ってきた。
ここへ来てからいつもあの人に守られていたことに、あらためて気が付いた。
あの人は大丈夫だろうか?ふと、月明かりもない真っ暗な闇の中、雷鳴とともに不安がよぎる…
そんな不安を振り切るかのように、チュホンを走らせる…
ーあの方の温もりと記憶の片隅にある花の香りが残っている気がして、大きく息を吸った。こんなときなのに心が震える…
あの方を必ずお守りせねば。
雷鳴轟く中、しばし戦っているとどうもこやつらは、俺を殺す気はないようだ。
お二人の元へ行こうとしておるようだと気付いた。
はっ!!行かせるわけがあるまい!
何人たりともここは通さん。
チェ・ヨンは鬼神の如く戦った。
同じ頃、近衛隊のチュソクは副隊長の命をうけ森の中を隊長を探すため、馬を蹴っていた。
前方に灯りが見えた…
急いで馬の背を降り木の陰に隠れて様子をみた。どうやら官軍のようだ。
副隊長に言われたことを思い出していた…
『このままでは、隊長は反逆者にされかねん。王も疑い始めた。とにかく急ぎ皇宮へお戻り願うと…』
その時チュソクは、何かの気配に気付き、刀を向けた。
狩人とおぼしき男が『わぁ~わぁ~わぁ敵じゃない』笑みを浮かべながらそう答えた。
『はっ、俺を誰だと思って敵じゃないと言ってるんだ?』
『その出で立ち、近衛隊とお見受けする。』
チュソクは顔には出さなかったが慌てていた。
『山奥の狩人に近衛隊がわかるのか?』
『チェ・ヨン隊長を探しに?』
チュソクはさらに慌てた。刀を抜き切ってしまおうかと思ったほどに。
何者だ。。。
狩人はその刀を避けながら言った。
チェ・ヨン隊長を探しだしお連れせよと命を受けた者だ。と…
どうする?こいつは使えるのか?それとも敵の罠か?
まあ良い。この島のことには詳しかろう…
隊長を探すまではこいつに付き合おう。
あとは、隊長が考えて下さるだろう…
ー江華島はとんでもない噂が流れています。チェ・ヨン隊長が慶昌君を密かに連れ出そうとしてバレたと…
それを助ける者たちが100人を超えたと。
違う、もっと居ると…
何を馬鹿な…チュソクは驚いた。
ー知らなかったのですか?
江華島の官軍は全部聞いていたのに。
それで前もって準備していたのに。
チェ・ヨンと慶昌君はいつ来るのか。
ー密告はいつあった?
ー昨日の昼です。すでに全軍待機の命が下っていました
チュソクはため息をついた。
どう言うことだ…誰が何の為に…
そのころ、王宮では…
チョ・イルシンが王に苦言を話していた。
ーチェ・ヨンを信じるべきではなかったのです。何度も進言したはずです。キ・チョルが何を申したか存じませんが、王よ、賢明なご判断をお下しください。
チェ・ヨンはキ・チョルの手のもの。
でなくば医仙を連れ慶昌君のもとへ走り幾多の逆賊の援護を受け、幽閉先から逃走するなど…
キ・チョルの庇護なくして単独では到底なし得ませぬ。
それを聞いている王はピクリとも動かない。

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