一層厳しくなった。ラケットの正面で受ける速いボール
が信彦めがけて飛んでくる。
素人の硬式テニスは難しいもので
信彦はラケットで受けられず
テカテカに光ったおでこにいくつものボールをあてた。
「これじゃ、ラケットがいらないね」康子は信彦に笑顔で語りかけた。
康子はテニスの特訓というより、ボレーいじめに近かった。
相棒のともみは康子の特訓を呆然とただ、見ているだけだ。
「それより、もう少し若い人を会社の後輩でもいいから連れてきてよ」
「ともみがだいぶ退屈しているよ、イケメンでなくてもいいからさあ」
「はい、元の会社の後輩を当たってみるよ」と信彦は赤く腫れたおでこを
そーと触りながら答えた。