初めてのスーツケース

小学校一年生の時、お友だちの家族が
ドライブ旅行に誘ってくれました

軽井沢の別荘に
連れて行ってくれると言うのです

私にとって、家族と離れての旅行は
初めてだったのではないでしょうか

出発の日まで間もなくという頃
母が用意してくれたのが
このスーツケースです

それまでの家族旅行では
私の荷物のほとんどは父や母の
バッグに入っていたのでしょう

初めての自分のスーツケースに
心躍らせながら持ち物をつめた光景が
今も思い出されます

一泊だったか、二泊だったか…
小さな旅行に小さな私を送り出す

笑って見送ってくれた家族ですが
きっと心配もあったのでしょうね

私はと言えば
友だちと車の中で大いにふざけて
疲れて眠ってしまい
目が覚めたら軽井沢のに
着いていた驚きと喜び

帰る頃には家が恋しくて
淋しくなってしまった内心を
友だち家族に悟られまいと
さらにふざけるお調子者でした（笑）

…さて、大人になった今
そのスーツケースで
旅をすることはできません

大切な手紙とか 昔海で拾った貝殻とか
捨てることのできない
思い出の品々をつめて
ちょこんとしまってあります