テレビを見ているとき、
本を読んでいるとき、
些細な言葉や映像がきっかけで、
身体の深いところから、
なんとも言えないものが、
私の中で広がる瞬間がある。
それは、
無の感情で、
名前をつけることが難しい。
冷たいものが体内に行き渡り、
震えのようなものが走る。
父が亡くなったときの経験から、
抗わずに通りすぎるのを待つ。
抑えこんだり、気を紛らわしたり、
気にしないようにすると、
あとで大きな感情に揺さぶれる。
その体内で広がる深い深い感情も、
日にち薬で薄らいでいく。
今しか味わえない大切なものだから、
それは母が残してくれたものだから、
抗わずに味わって通りすぎるのを待つ。
その時間を愛おしいと想う。
広がる悲しみのもとは愛だから。