私と実弟は、実家に帰っても、極少数の友人としか会わないし連絡を取らない。

私も実弟も高校卒業まで暮らした町だし、同級生もいるし知人もいる。

でも、実家の片づけをしている最中は誰にも会いたくない。

その気持ちが一緒なんだなとわかった出来事があった。

 

毎週月曜日に、お豆腐売りのおばさんが実家に立ち寄ってくれていた。

そのおばさんは、私の高校の同級生のお母さんで、

午後一番で実家に寄って、コーヒーを飲みながら母とおしゃべりをするのが

恒例となっていた。

 

私が片づけで帰省した6日目のこと。

午後にまわそうとしていた外の片づけをお昼過ぎに終わらせて、

窓を開けて「やれやれ」とコーヒーでも飲もうと思ったその時です。

鍵をかけている玄関扉を開けようとしている音がした。

 

そこから5分ほど「いますかー?」「こんにちはー!」と

玄関から窓からベランダから、どんどんと叩いて呼び掛ける音が続いたのです。

 

そのことを翌週滞在する実弟に話したのですが、特に反応はなあったのです。

でも、「その日はお蕎麦を食べに行こう。」など、

お昼時に外出を促すような発言をしていたので「れ?」とは思ったのですね。

 

とはいえ、私の数百倍も社交的な実弟なので、もしかしたら、お豆腐屋さんとも、

母のことで、立ち話ぐらいはするのかしら?と思ったりもしました。

 

でも、違いました。

 

駐車場に実弟の車があるとわかった、お豆腐屋さんは、その日もあきらめることなく、

玄関から窓からベランダから、どんどんと叩きながら声をかけてきます。

 

でも、私も実弟も応答しませんでした。

あとで実弟が言いました。

 

「今、誰かに、母親をだまして実家を片づけるなんてと、少しでも非難されたらキレる。」

「全部が終わってから、ちゃんと挨拶する。」と。

 

ああ、一緒なんだなって思いました。

 

私たちだって、母に対してひどいことをしていることは自覚しているし、

自分たちの思い出の品々がゴミになっていく、どうしようもない感情も、

感じていないわけじゃないのに、赤の他人は平気で非難してくる。

 

そこに耐えられる自信がないから居留守を使う。

 

だから、もしも、このブログを読んでいる人の中で、

親が生きているのに、親の財産というか、捨てられなかったものを

代わりに処分している人がいて、罪悪感を抱いている人がいたら、

「私たちも一緒だよ。」と伝えたい。

 

哀しい気持ちと腹立たしい気持ちがない交ぜになりながら、

私と実弟はなんとか8割がた、実家を片づけることが出来ました。

 

あともうちょっとです。