引き続きの思い出話。このシリーズはタイトルに◆がついています。
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2016年は原油価格の急落からくるオイル&ガスの業界の大不況の年でした。
スタートは2015年から始まっていました。
DGの仕事(石油やガスを掘り出す仕事)は最初影響を受けるグループです。2015年の秋から仕事が完全に取れなくなりました。
それから工事関係やツールや機器を販売している会社や中小の会社。
オイル&ガスの大手企業でもShell(シェル)、Husky(ハスキー)、Cenovus(セノーバス)、Sancor(サンコー)、Nexen(ネクセン)…そいういった会社が次々とレイオフ(解雇)を始めました。
うちの会社は石油やガスの輸送関係の会社ですので、影響を受けるのは最後でした(新しく採掘するのではなくて、現在市場に流れているものを輸送するため)。
そんなわけで、2015年の冬頃に上にあげたような会社でレイオフが次々とおこなわれ、友人・知人が次々と仕事を失うのを目にしながら、うちはまだ大丈夫だろうか…DGに仕事が来ない中で私まで仕事を失ったらどうなるのだろうか…そんな不安を感じていました。
この時に友人関係を切らざるを得なくなった人たちもいます。
オイル&ガスは社会悪の象徴の存在のように言われることが多く、とくにリベラルな関係の人たちからは理不尽なほどに嫌われています。
石油やガスは私たちの現在の生活にはなくてはならない存在です。
家の電気や料理用の電気・ガスだけでなく、プラスチックやフリース生地だって石油製品だし、車を走らせるのもガソリンが主流。電気自動車も電気の発電の多くは化石燃料から来ています。
農業もディーゼルエンジンは使われていますし、風力発電やソーラー発電なども発電機や施設を作るのにも石油製品やガソリンは使われています。
コンピューターに携帯電話、それを作るプラスチック、そのシグナルを作って送るのは電気、使用にも電機は必要。
使う人たちは悪くないけれども、それを掘り出し、精製し、輸送するのは悪魔の所業で、会社もそこで働く人たちも悪だという。
哀しいことです。
そんなわけで、州全体が不況でひどいことになっているときに、他の州や国の政府(この年に国の政党がリベラル、州の政党がNDPに変わりました。両方ともオイル&ガスを嫌う政党です)からは救いの手も出されず、それどころか「いい気味だ」というようなコメントが多く寄せられました。
友人だと思っていた何人かの人たちからも、おそらく私がその業界にいることを失念したか(わかって言っていたのだとしたらさらに悲しいです)、ひどいコメントを聞かされました。
彼女たちの事が嫌いになったわけではありませんが、お付き合いをしていくのがつらくなり、離れていきました。
仕事を失う、経済的に苦しくなる…それ以上に、誰からも支えてはもらえないという孤独さがつらい2015年以来の現状です。
不安が現実になったのは2016年の6月でした。私たちの会社で最初のレイオフが行われたのです。
レイオフが行われる当日の朝は8時から12時まで自分の机で待機するように言われました。人事からの電話がかかってきたら、レイオフの対象に選ばれたということで、指定された会議室に行くように言われました。
本当に悪夢のような一日でした。
一番、精神的にダメージが大きい方法を選んだのではないかと思ってしまうくらいで、その日は誰かの机の電話が鳴るたびに心臓が跳ね上がるような恐怖を感じました。
業務時間ですので人事からの電話だけでない、普通の仕事の電話もかかってくるのですが、とてもじゃないですが仕事には手が付きません。
一番最初にマネージャークラスが呼ばれたようでした。一番信頼して尊敬していたマネージャー2人が呼ばれました(先日の記事に出てきた2人のマネージャです)。
そして尊敬していたチームリーダー。
仕事ができて頼れた同僚たち…。
会社の上のレベルからは別の意見が聞けそうですが、私たちのレベルから見た限りでは誰が見ても仕事のパフォーマンスで選ばれたのではありません。
尊敬していたマネージャーたちは業務改善をしていこうと尽くしていた人たちでした。
どうしても変化を嫌う多くのマネージャーたちの敵になってしまっていたようでしたが、我々のレベルからは、レッドテープの数を減らし、業務をスムーズにし、各部署が敵対しあうのではなくて協力し合う体制が作られていくという希望を持たせてくれる存在でした。
他にも上に意見をしたことがあるプロジェクトマネージャー、人手が足りずにひどい状況になっていた部署で、それをはっきり伝えたサプライチェーンの女性。
同じ部署の中で残されたのは、父親がシニアマネージャーだという人だったり、かつてのバイスプレジデントの娘だったり、某ディレクターと家族ぐるみの付き合いがある人だったり…上に意見を言えないようなジュニアレベルの社員だったり…。
社内のポリティクスの結果だと思えました。
この日、うちの会社ではカナダとアメリカで20%の社員がレイオフの対象になったと、ニュースで知りました。
それまでは純粋に会社が好きだったのですが、この日を境に会社に対する目が変わったと思います。
このあとで似たような大掛かりなレイオフが2回、デパートメントのレイオフが何度も…2017年の初めまで続きました。
私は何とか生き残りましたが、次回はどうなるかわかりません。
ここのところ、上司に意見をしていますしね。
もしも仕事を失ったとしても、次が見つかるようにスキルを上げていかなければ…と思います。
アルバータ州の不況はまだ改善されていません。
人によっては原油価格が$60を超えるまではどうなるか…と言いますが、そのあたりは私にはわかりません。
経済のアップダウンはあるものですが、やはり味方がいない状態というのはつらいな、と思います。仕方がないのかもしれませんが…。やはり悲しいですね。