引き続きの思い出話。このシリーズはタイトルに◆がついています。
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2012年にカナダの永住権(PR)を取得し、やっと地に足がついたような、人心地がついたような気持になっていました。
しかしこれでは終わらず、更なる決断の時がやってきました。
2014年はカナダの市民権をとるかどうかで真剣に悩んだ年でした。
それまでは永住権(PR)さえもっていれば不都合はない、と思っていましたし、何よりも日本国籍を失うということが、とても恐ろしいことのようにも感じていました。
ここで私の思う永住権(PR)と市民権(Citizen)の違い。
永住権があれば、カナダ人とほぼ同じ権利と義務が得られます。
カナダの市民権保持者にあってPR保持者にないものは「選挙権」と「陪審員義務」。
こんなの別になくてもいい、と思うか否かは人それぞれだと思います。
あとは永住権は5年毎の更新が必要です。このときに過去5年のうち2年間(続けてでなくても良い)はカナダにいることが条件となります(Note 1)。
あと、アメリカに行く際にはカナダ人は割と簡単にアメリカとカナダを行き来することができます。
日本人の私はアメリカに空路で行く場合はESTAが必要になります。そして陸路の場合はI-94Wというビザ免除入国用の入国書類が必要です。
これでいつも連れのカナディアンを待たせるのが心苦しかったです。
まあしかし、これまでの事は全て「不便だけど日本国籍を失うことを考えるほどではない」かもしれませんね。
さて、最初のきっかけは9月でした。
初めての長期のバイク旅行を友人夫妻と計画。サンフランシスコに行って、そのあとウェストコーストをバイクで走りながら戻ってくる、というものでした。
2017年のバケーションと同様に、バイク組(DGと南氏)は先に出発。バイクで3日かけてサンフランシスコへ。
私と南夫人は飛行機でサンフランシスコへ行って、現地でDGと南氏に合流。そこからバイクで戻ってきましょう…という計画になりました。
ここで問題になるのがESTAとビザ免除書類I-94Wの存在です。先ほども触れたように空路の際にはESTAが、そして陸路の際にはI-94Wが必要になります。
恐ろしい…というか北米らしいというか…この2つは別システムで管理されれているようで、それぞれのデータはシステム上で共有されていないらしいです。
つまり行きは空路(ESTA)でアメリカに行き、帰りが陸路だった場合に、アメリカ出国の記録がつかない可能性があるという。
その時は何ともなくて、次回アメリカに行くときに「きみ、前回はオーバーステイしたのでは?」などということが起こりうるという。
因みに逆の場合は簡単なようです。行きはI-94Wの取得が必要で、それはパスポートに挟まれて渡されます。それをとっておけばいい話。帰りはESTAですが、出国の際に空港でI-94Wの紙を返却すればいいのです。
私の場合は、行きが空路で帰りが陸路だったので、どうすれば一番トラブルが少ないかに行きつくまでに2か月くらいあちらこちらを調べました(Note 2)。結構なストレスになりました。
アジア方面に行くよりも、アメリカに行く方が断然多い。カナダ国籍の便利さが浮かんだ最初のきっかけでした。
次は同年10月。90歳を超えて、ここ数年はほとんどベッドの上で過ごすことが多かった祖母が亡くなった知らせが来ました。
デイケアセンターに週に2回くらいいく以外は自宅で過ごした、素晴らしい余生だったのではないかと思います。母の介護の献身ぶりには頭が下がります。
10月16日に突然の知らせで動揺しながらも、翌日には日本に帰国することができました。DGの活躍のおかげ、感謝です。
こうやって帰国しようと思えばすぐに帰国することができる…というのはカルガリーなどの国際空港がある年に生活している利点だとはおもいます。
しかし、この時に浮かんだのは年老いていく両親の事でした。
祖母には私の両親がいた。そしてここ数年はずっと一緒に暮らして支えあって行けた。
両親に介護が必要になったときにはどうなるのだろう…?
日本人でいることは日本に帰国して親の介護をする上では便利です。カナダ人だと長くは日本に滞在できませんから。
しかし同時に、長い間日本にいることで、次回のPR更新が認められない可能性があるという。
反対に私がカナダ国籍の場合、日本人の両親の介護のためといえば「日本人の配偶者等」というカテゴリーの特別ビザがおります。これは日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者(私はこのカテゴリー)は最高5年までのビザが出るという。
将来の親の介護の可能性を考えたときに、そして再びカナダに戻ってくることができるためにはカナダ国籍をとる方がいいように思ったのです。
考えた末に、カナダの市民権を取得する決意をしました。
書類自体は永住権(PR)の申請と似ていますが、さらに簡単だったので自分で揃えました。
翌年に市民権のテスト(カナダの歴史や文化についてのテストがあります)と面接の案内がきました。
テストを受けに行ったときに(ありがたいことにテスト会場は会社から道を挟んで向かいのビルでしたので、仕事中に半日休むだけで行くことができました)、同僚がテスト会場にいたのは嬉しい驚きでした。話をすることで緊張が和らいだのを覚えています。
テストに合格すると、つぎは宣誓式(カナダ国民になるための宣誓のセレモニー)への招待がきます。
なんどかカナダデーで野外で行われたセレモニーを見ることがありましたが、自分が当事者になる日が来るとはカナダにきた当初は思いもしませんでした。
以前にも書きましたが、カナダに来た時には1年間という期間限定の留学兼バケーションだったわけですから…人生、どう進むかはわかりませんね。
セレモニーにはDGと長男くんが見に来てくれました。感謝。
(カナダ市民権の証明書を受け取る私)
市民権取得というのは大きな決断です。日本国が二重国籍を認めないという今の状況ではなおさらです。
私もカナダ国籍を取得してすぐに領事館に行って日本国籍の返還をしました。
一か月後に戸籍謄本をとりよせてもらい、自分の名前が除籍になっていたのを見たときには、やはり少し悲しかったです(領事館で、いつか必要になるかもしれないので除籍の記録がついた戸籍を取り寄せておくように言われました)。
国籍についての決断については正解は一つではないと思います。
どんな種類の決断でもそうですが、自分が納得して、自分で決めたことであるというのが大切なのだと思います。
次回、日本に行くときには初めてカナダのパスポートでの日本入国になります。
なにか感じることになるのかな…。
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Note 1:
友人はカナダで仕事をしていますが、海外出張が多いので次回の更新が心配だといっていました。ちなみに出張・旅行などで国外に行っていてもカナダ国籍者の配偶者が一緒であればカナダにいた期間として換算されるのだとか。
カナダの会社で働いていることで、海外出張が多くなっているというのに(事項都合ではないのに)、それが永住権(PRビザ)更新の時に問題になるのは納得がいかないですが…特例を設けると大変だということでしょうか。
Note 2:
今回またインターネットで調べましたがはっきりしませんでした(こちらをどうぞ)。
私が行きついた方法は、行きにアメリカ入国スタンプがあることを確認。空路の場合はこのあたりは大抵大丈夫ですが、一応、注意してみておくのが良い。
帰りも国境で必ず出国のスタンプをもらうこと。これは陸路の場合はスタンプなしの場合が多いので、注意してください。
家に帰ったときに、パスポートのスタンプを両方ともコピーして、アメリカのI-94Wのデータを管理するオフィスに郵送する、というものでした。
これはI-94Wの返還忘れ(恐ろしいことに、こちらが返さないと、向こうは特に集めてくれないんです)の場合に変換する送付先と同じです。
2014年の段階では
Coleman Data Solutions
Box 7965
Akron, OH 44306
Atten: NIDPS (I-94)
でした。