バケーションの話の途中ですが、せっかくのサンクスギビング週末なので、一旦お休みしてカナダでのはじめてのサンクスギビングエピソード書きます。


引き続きの思い出話。このシリーズはタイトルに◆がついています。

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2007年10月8日

感謝祭がカナダにあったのを知ったのは8月にアメリカに行ったときのことでした。

 

「カナダの感謝祭って10月なんでしょ」との友人の言葉に、まさか感謝祭の日が違うなんて…、いやそれよりもカナダにも感謝祭があったなんて…と驚いた次第。

 

アメリカで感謝祭といえば11月の第4木曜日、多くの親族が一同に会し、共にターキー(七面鳥)を囲んでのディナー(Thanksgiving Dinner)。そして感謝祭の朝にはホワイトハウスで大統領による二羽の七面鳥への恩赦(Turkey Pardon:屠殺される運命から救う)が行われるというのが定番。そもそも感謝祭の始まりはイギリスからアメリカへの入植者のエピソードではなかったかな。当時マサチューセッツ州・プリマスで入植者たちが冬の厳しい寒さに多くの死者を出した。そのとき近くの先住民族の助力で生き延びることができた。翌年の秋は収穫が多く、その喜びと感謝を表すために先住民族を招待して共に御馳走を食べた…ということだったはず。

 

さてさて、カナダの感謝祭はどんなものだろう?

 

先住民族云々の話も聞かぬし、ターキーの恩赦のイベントもない。

 

「感謝祭」なのか「七面鳥の日(turkey day)」なのかも良くわからない。

 

学校でもプリマスのエピソードを知る人は少なかったし。

 

ただ納得できるのは「カナダは寒いから、収穫も11月じゃなくて10月になるんだろうなぁ」という時期の違いだけ。キャムとマージの会話から、カナダの感謝祭も「家族でターキーを食べる日」と位置づけされていることだけは判りました。

 

そういうわけで、1週間ほど前から「どんな一日になるのか」と期待が膨らんでいたのでした。

 

5日(金曜日)には学校を休む生徒が何人かいました。

 

家族から離れてカルガリーに来ている人たちが、感謝祭を祝うために一足早く地元の州に里帰りをしたようでした。日本のお正月みたいな感じですかね。

 

6日(土曜日)は朝から学校に行きました。

 

日曜日に友人と遊ぶ予定だったので宿題とテスト(コンピューターに向かって各自で受ける)を済ませてしまおうという目論見だったのですが…なんと、感謝祭の連休で学校が閉まっていました。

 

掲示には「感謝祭の月曜日には学校は閉めます」とあったので土曜日は通常通りと思い込んでいたのですが、見事にはずれた次第。こういうのも感謝祭ならではか…?

 

こういうイベント関係や文化に関する感覚は私にはまだつかめていないのです。

 

7日(日曜日)はインディアン・サマー(小春日和)で18℃もありました。

 

外に飛び出たくなるような陽気の中、感謝祭の準備でパンを焼くマージ。

 

それを尻目に友人と出かける私。

 

夕方家に戻ると「キャムのいとこの家に感謝祭のディナーに行ってくる」とのことで2人もでかけていきました。

 

この時期には妻側の実家、夫側の実家、その他の親戚の家、などと呼ばれることもあり、当日だけでなく「感謝祭の食事会」が行われるようです。特に州を越えて帰省してくる人などは連休の中日である日曜日は都合がいいのかもしれない。こういうところも日本のお正月の雰囲気に似てますね。

 

8日(月曜日)、朝8時にはマージが起きてくる(彼女にとって休みとしては早い方)。

 

前日から解凍していたターキーがテーブルにのっていました。

 

今回はキャムとマージ、下の息子とその婚約者、キャムとマージの友人夫妻、留学生2人の8人。ターキーも大型でした。

内臓を抜かれたターキーの腹には何が入っているか?

 

今までは出来上がりの食べるばかりとなった姿しか見たことがなかったので初めて知ったのですが、下の写真のようなものが入っていました。左が首。右の包みの中身は心臓とレバーです。

 

てっきり私が怖がるものと期待していたらしいキャムとマージであったが、私が「おいしそー」と言うのでがっかりしていました。ご期待に沿えず申し訳ございません。

 

「鳥の心臓って食べたことある?牛は?」と聞いてくるので、ここは中国人ほどではないにしても何でも食べる日本人の面目躍如!とばかりに張り切る私。

 

「牛の心臓は食べたことないけど、鳥の心臓は大好き。レバーも好き。日本人は新鮮であればレバーは胡麻油をかけて生で食べるんだよ。牛は顔がおいしいよね、私は頬の肉が大好き。日本では牛の舌はごちそうで高価な食べ物なんだよ。そうそう牛といえば胃袋が美味しいの、知ってる?」

 

相手のギョッとする顔は楽しいですね。キャムが留学生をからかう気持ちがわかる気がしました。

 

心臓やレバーは彼らにも許容範囲だったらしいのですが、胃袋は想像外だったようでした。

みなさんも機会があれば楽しんでください。

 

ただイタリア人相手だと驚かれはしないと思います。地方によってはイタリア人も牛の胃袋(トリッパ)を食べるし。あと驚かれたのは海老の尻尾を食べたとき(アメリカでもカナダでも驚かれました)。ディープフライだとこ海老の尻尾は食べられる、と思うのだけど、日本でも元夫はしなかったし…うちだけかなぁ。できそうだったらお試しください。野蛮人、未開人のレッテルをはられる危険性はありますが…。

 

ターキーに塩コショウをしてしばらく置き、その間にパンプキン・パイにとりかかります。

 

マージがパイ生地をこね、伸ばし、パイ皿にうつしていきます。さすがに手際が良い。

 

中身はかぼちゃの缶詰、ミルク、砂糖、卵、シナモン、生姜。

 

「パンプキン・パイの中身は液状だからパイ生地はアップルパイに比べて厚めに作るのがいいのよ」とのマージの説明を、洗い物や片付けなどで手助けしていた(アシスタント業務は好き。料理は積極的にはなれない)私でしたが、時間に余裕がなくなったのを感じたマージからパイの中身作りの役を仰せつかってしまいました。

 

パイ生地と違って混ぜるだけなので気は楽なのですが、分量をはかるのは緊張しました。

 

あとは卵を箸ではなくてフォークで混ぜるのがやりにくかったです。

 

出来上がった中身はさらさらの液状。焼いたパイ生地に中身を流し込みましたが、余りに水っぽいので、どうなることかと心配になりました。

 

オーブンで焼くこと暫し。

 

昼前にオーブンから良い香りがしだしたところで、ルームメイトのナディア(メキシコ人)が起きてきました。

 

ナディアは「おいしそう!」と足をバタバタと踏み鳴らして喜ぶ(実際に足をバタバタ踏み鳴らして喜ぶ人ってなかなか見ないですが…さすがラテン系?)。つややかなパイの表面にうっとり。

 

このまま自然に冷めるのを待つのだそうです。これに食べるときに生クリームをたっぷりかけていただくとのこと。楽しみです。

さて、次はいよいよターキーの出番。

 

ターキーには中にスタッフィング(ドレッシングともいう。カナダ英語かな?キャムとマージはドレッシングと呼んでいましたが、私にはアメリカ南部で聞いたスタッフィングという言い方の方が馴染みがありました)をつめていきます。

 

まずはこのスタッフィング作りから。

 

角切りのパン(クルトンサイズ)をボウルに入れ、スタッフィング用のミックス調味料を振りかけ水を加えて混ぜます。ここからは家庭により違うようです。

 

アメリカの友人はこれをターキーに詰め込んで、あとは肉汁で自然に味がつくのに任せていました。

 

マージはリンゴのみじん切りとマーガリンでソテーしたセロリを加え、セージを少々振りかけていました。

 

両手で抱えるほどのボウルいっぱいに作りましたが、これが全てターキーの腹に詰め込まれていきました。

入り口はステンレスのピンで閉じられ、ロースト用の鍋に入れられ、オーブンで5時間ほどかけて料理するのだそうです。

今回は大き目のターキーだったため、ロースト用の鍋にギリギリ収まったものの蓋が閉まらず、アルミホイルを二重にかぶせた後で蓋を載せていました。

 

アルミで風をしたのに蓋はあった方がいいのか、気分の問題なのかは不明。この時点で11時半。出来上がりは4時半といったところでしょうか。

 

次にサツマイモ料理。これもオクラホマの感謝祭に登場していたので感謝祭の定番なのでしょうか。

 

A4用紙からはみ出すほどの大きな芋が3個登場。

 

こちらのサツマイモは皮が白っぽく、中は山吹色。

 

普通「スィート・ポテト・キャセロール」というと、茹でたサツマイモ(マージは電子レンジにかけた後、オーブンで3時間焼いていた)に、マーガリン、エバミルク、砂糖、卵、バニラエッセンスを加えて混ぜ、それにトッピングとして小麦粉、ベーキングパウダー、マーガリン、胡桃等のナッツ類、ブラウンシュガーを混ぜたものをかけてキャセロールという深めの耐熱容器に入れ、オーブンで焼く…というものだと思っていたのですが、マージのレシピではトッピングに工夫があり、ナッツではなくて刻んだパイナップルの缶詰が加えられていました。

 

 

サツマイモ料理に入ってすぐ(マージがポテトをオーブンに入れたところ)で、昼になって空腹を感じた私たち。

 

「今日は忙しいから昼食は作れない」というマージでしたが、結局は手作りパンでサンドイッチを作ってくれました。

 

更に昨夜の残りのベイクド・ポテトにチーズを載せて温めなおし、ソーセージを温めて簡単なランチ(彼女にとっては、ですが…充分豪華なランチと思うのは私)となりました。

 

ここでキャムとマージの友人夫妻が到着。夫の方はキャムとと同じ名前(本当の名前は違ったはず。カミーユだったか?フランス系カナダ人)。

 

さすがフランス系だけあって陽気でグルメ。しばらくして焼きあがったターキーの首を見つけて(マージはスープにする予定だったらしいのですが)、「食べてもいい?」と独り占め。

私も食べたかったのです…が、食卓に登らないものは食べない行儀のよさ(?)で敗北。

 

ターキーが焼きあがると、あとは一家の主人の役目が待っています。ターキーの切り分けです。

 

「赤毛のアン」でも結婚した最初の年にギルバートが事前に本でターキーの切り分けを勉強する話があったのを思い出します。

 

一連の作業を頭の中で再確認中に人に話しかけられ「いま話しかけられたら手順を忘れてしまう」と言っていたギルバート。

 

上手に切り分けられるかどうかが一家の主人としての腕の見せ所なのかもしれませんね(逆に言えば舅が娘婿を品定めする機会となるのかしら?)。

 

昔と違って今は電動のナイフを使うので(以前よりは)簡単なのかもしれないのですが、どちらにしろ私には日本の大学時代の博物館実習の骨格標本作りが思い出される作業でした。

 

切り分けられた肉は赤身(ブラウン・ミート)と白身(ホワイト・ミート)に分けて盛られます。

 

ターキーの話題になると「白身派か赤身派か」と聞かれますが、カナダでは鶏肉でも胸肉が人気なのと同様にターキーでも白身派が多い気がします。

 

キャムとマージの息子さんの婚約者殿も「私も子どもの頃は赤身が好きだったけど、今ではくどくいと感じるようになったの。大人になると白身が好きになるものなのね」と言っていました。

 

私は彼女よりもずっと年上ですが今でも赤身が好き…なのはきっと日本人ならでは(なのかな?日本だとモモ肉のほうが人気ですよね?)。

 

どちらにせよ、赤身派(腿肉大好き)の私は競争相手が少なくて嬉しい限り。

 

テーブルに並んだのは次の通り(左から)。

  • ターキーの切り身 (これは写真に入りませんでした)
  • 手作りパン(ディナーバン)
  • マッシュドポテトとグレービーソース
  • スィート・ポテト・キャセロール
  • 干クランベリーとリンゴが入ったサラダ
  • 別の皿に盛られたスタッフィング
  • クランベリーソース
  • そして食後のパンプキン・パイ (これも写真には入りませんでした)

 

上の写真でわかりにくかったマッシュドポテトとグレービーの写真はこちら。アメリカでは見なかったクランベリーソースですが、こちらでは主流のようです。私はグレービーのほうがなじみがあって好きです。

 

このなかで人気だったのはスィート・ポテト・キャセロール。

 

オクラホマの友人宅では残されることが多かったので、これは意外でした。

 

北米人は食事時に甘いものを食べるのは好みではないのかと思っていたのですが、家庭による違いなのか国による違いなのか…。

 

食後は過去に撮ったビデオ(約20年前のキャムとマージの結婚20年目記念パーティのビデオが中心)や写真(息子さんが婚約したばかりなので、2人の婚約案内状用の写真が中心)を囲んでの団欒のひと時。

 

初めてのカナダの感謝祭は和やかで美味しい感謝祭となりました。